外国人材の受け入れが広がるなか、企業側の実務対応は追いついているでしょうか。
人手不足への対応として外国人を雇用する企業は増えていますが、税務や労務の取り扱いを誤ると、後になって大きなリスクに発展することがあります。
とくに中小企業では、人事・労務・税務を兼務で処理しているケースも多く、「日本人と同じ感覚」で処理してしまいがちです。
しかし、外国人材には特有の注意点があり、制度理解の不足は企業側の責任として問われます。
在留資格と業務内容のミスマッチ
外国人を雇用する際、最初に確認すべきなのが在留資格です。
在留資格ごとに従事できる業務内容は厳格に定められており、資格外の業務に従事させることは違法となります。
たとえば、専門職向けの資格で入国しているにもかかわらず、実態として単純作業に従事している場合、企業側が不法就労助長と判断されるリスクがあります。
悪意がなくても、業務内容と資格の不一致は重大な問題です。
社会保険・労働保険の加入漏れ
外国人材であっても、日本で雇用される以上、社会保険や労働保険の適用は原則として日本人と同じです。
短時間勤務や試用期間中であっても、要件を満たせば加入義務が生じます。
「外国人だから」「いずれ帰国するから」という理由で未加入とした場合、後日さかのぼって是正を求められる可能性があります。
企業にとっては、保険料の追徴だけでなく、管理体制そのものが問われる事態になりかねません。
源泉徴収と年末調整の注意点
税務面で多いのが、源泉徴収の誤りです。
外国人であっても、日本に居住して給与を得ている場合、原則として給与所得として源泉徴収の対象になります。
ただし、居住者か非居住者かの判定、租税条約の有無などによって取り扱いが異なるケースがあります。
これを誤ると、源泉徴収不足や過大徴収が発生し、後の修正が煩雑になります。
年末調整についても、「対象になるかどうか」を正しく判断できていない例が見受けられます。
賃金・労働条件を巡るトラブル
外国人材との労務トラブルで多いのが、賃金や労働条件を巡る問題です。
言語の壁から、雇用条件が十分に理解されていないまま就労が始まるケースがあります。
その結果、残業代の未払い、休暇制度の誤解、契約更新を巡る認識の違いなどが表面化します。
トラブルが発生した場合、日本の労働法が適用される以上、企業側の説明責任は重くなります。
「コスト」としてだけ見た場合のリスク
外国人材を「人手不足を埋めるためのコスト」としてだけ捉えると、対応は後回しになりがちです。
しかし、制度理解や管理体制を軽視すれば、結果的にコストは増大します。
在留資格の問題、税務調査での指摘、労働基準監督署からの是正勧告など、リスクは複合的に連鎖します。
とくに地方の中小企業にとっては、一度のトラブルが経営に与える影響は小さくありません。
結論
外国人材を雇用するということは、人材確保と同時に、税務・労務の管理責任を引き受けることでもあります。
善意や現場判断だけでは、制度の複雑さに対応しきれません。
重要なのは、外国人材を特別視しすぎず、同時に「同じ扱いでよい」と安易に考えないことです。
正しい制度理解と事前の整備こそが、企業と外国人材双方を守ることにつながります。
人手不足時代において、外国人雇用を持続可能な選択肢とするためには、実務リスクに正面から向き合う姿勢が不可欠です。
参考
・日本経済新聞
「人手不足1100万人」備えよ 2040年、外国人材が経済左右
・日本経済新聞
CheckPoint 外国人の受け入れは「無秩序」?
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。

