外国人労働者の活用と課題

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――シリーズ「東京の人口増、その9割が高齢者だった」第4回

東京の高齢化は急速に進み、それに伴って介護人材が深刻に不足しています。
前回の記事でご紹介したように、東京都だけでも2030年度には約4万7000人の介護職員が足りなくなると予測されています。

この不足を補うための現実的な選択肢の一つが「外国人労働者の活用」です。すでに介護の現場では、アジアを中心とした外国人材が働き手として欠かせない存在になりつつあります。今回は、この動きの現状と課題について考えてみます。


外国人介護人材はなぜ必要なのか?

介護職は人手不足が最も深刻な分野のひとつです。

  • 身体的・精神的な負担が大きい
  • 給与水準が低め
  • 勤務時間が不規則になりやすい

こうした理由から、日本人の若い世代にとっては「なり手が少ない」仕事になっています。

一方で高齢者は増え続けているため、サービスを提供する人手はどうしても必要です。そこで注目されているのが、外国人労働者なのです。


どんな仕組みで外国人が働いているのか?

介護分野で外国人が働くルートはいくつかあります。

  1. EPA(経済連携協定)
    フィリピン、インドネシア、ベトナムなどとの協定に基づき、介護福祉士候補として来日する制度。日本語や専門知識を学びながら、資格取得を目指します。
  2. 技能実習制度
    日本で技術を学び、母国に持ち帰ることを目的とした制度。介護も対象職種になり、各地の施設で受け入れが進んでいます。
  3. 特定技能制度
    2019年から始まった制度で、一定の日本語力と技能があれば在留資格を得て働けます。介護分野でも活用されており、長期的な戦力として期待されています。

このように複数の仕組みを通じて、多くの外国人がすでに日本の介護現場を支えているのです。


外国人材の「東京集中」

全国老人福祉施設協議会の調査によると、地方で採用された外国人介護職員が、より条件の良い首都圏に移ってしまうケースが目立っています。

  • 地方:施設数はあるが給与水準が低い、生活の利便性に乏しい
  • 東京:給与や待遇の上乗せ、生活環境の便利さがある

そのため、結果的に東京や大都市圏に外国人介護職員が集中する流れが強まっているのです。

これは都市部にとってはありがたい一方で、地方にとっては「せっかく受け入れても定着しない」という大きな課題になっています。


定着のカギは「働きやすさ」と「暮らしやすさ」

外国人材を受け入れるだけでは十分ではありません。大切なのは「定着」してもらうことです。

  • 働きやすさ
    介護のスキルを学べる研修体制、日本語でのコミュニケーション支援、キャリアアップの道筋。
  • 暮らしやすさ
    安定した住居の確保、生活費の負担軽減、地域との交流の場。

東京都のように財源の豊富な自治体は、家賃補助や生活支援策を整えることができます。ですが、これが地域間の格差を広げてしまう面もあるのです。


文化・言語の壁

外国人が介護現場で働くうえで、最も大きな課題は言葉と文化の違いです。

  • 利用者との細やかな会話が難しい
  • 方言や日本特有の言い回しに対応できない
  • 家族との信頼関係を築くのに時間がかかる

介護は単なる身体的なサポートにとどまりません。「安心感」や「心の通った交流」も大切な仕事の一部です。そのため、言語や文化の壁は決して小さな問題ではないのです。


生活者として地域に根づくには

外国人介護職員が地域に長く暮らし、安心して働けるようにするには、「労働力」としてではなく「地域の住民」として迎え入れる姿勢が必要です。

  • 日本語学習を支援する
  • 地域イベントや学校などで交流の機会を増やす
  • 家族帯同をしやすくする仕組みを作る

こうした取り組みがあって初めて、外国人材が「単なる数合わせ」ではなく、本当の意味で地域を支える存在になれるのです。


生活者にとっての影響

私たちにとって外国人介護職員の存在はどう関わるのでしょうか?

  • 将来自分や家族が介護を受けるとき、外国人職員に支えられる可能性が高い
  • そのためには「安心して任せられる体制づくり」が不可欠
  • 言葉や文化が違う人と一緒に暮らすことへの理解や寛容さも求められる

つまり「外国人材の活用」は、単なる業界の問題ではなく、社会全体の課題なのです。


まとめ

東京の介護人材不足を補うため、外国人労働者の存在はますます重要になっています。

  • すでにEPA、技能実習、特定技能制度を通じて多数が現場で活躍
  • しかし待遇や生活環境の違いから都市部に集中しやすい
  • 言語・文化の壁や定着支援が大きな課題
  • 「労働力」ではなく「生活者」として迎える視点が不可欠

私たち生活者にとっても、外国人介護職員は未来の「身近な支え手」になる存在です。そのために社会全体での理解と環境整備が求められています。

次回(第5回)は、このような大きな変化の中で「生活者として私たちができる備え」について考えていきます。


📌 参考:
東京一極集中の実相(2) 人口増内訳、高齢者が9割(日本経済新聞、2025年10月1日付)
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO91639170Q5A930C2L83000/


という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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