外国人による土地取得をめぐる議論は、日本だけの問題ではありません。近年、住宅価格の上昇や安全保障の観点から、外国人による不動産取得を規制する政策が各国で導入されています。
特に都市部の住宅価格の高騰が社会問題となった国では、外国人投資による不動産購入を制限する制度が検討されてきました。一方で、外国投資を呼び込みたい国では、不動産取得を比較的自由に認める制度も維持されています。
本稿では、外国人による土地取得をめぐる主要国の制度を整理し、日本の制度との違いを考察します。
カナダ――外国人住宅購入の一時禁止
カナダでは、住宅価格の高騰を背景に外国人による住宅購入を制限する政策が導入されました。
2023年から一定期間、外国人による住宅購入を原則として禁止する制度が施行されています。対象となるのは都市部の住宅で、投資目的の購入を抑制することが目的とされています。
この制度は住宅市場の過熱を抑えるための措置として導入されたものであり、外国人投資家による不動産取得が住宅価格の上昇を招いているという問題意識が背景にあります。
ただし、永住者や一定の労働者などには例外が認められており、完全な禁止ではなく一定の条件の下での制限となっています。
オーストラリア――許可制度による管理
オーストラリアでは、外国人による不動産取得に対して政府の許可制度が設けられています。
外国人が住宅を購入する場合には、外国投資審査委員会による審査が必要となることがあります。特に中古住宅の取得には制限があり、新築住宅の購入に誘導する政策が採られています。
この制度の目的は、外国投資を完全に排除することではなく、住宅供給を増やす方向に投資を誘導することです。新築住宅への投資を促すことで住宅供給を増やし、住宅市場の安定を図る仕組みとなっています。
ニュージーランド――外国人住宅購入の制限
ニュージーランドでは、2018年に外国人による住宅購入を制限する法律が成立しました。
この制度では、原則として外国人による既存住宅の購入が禁止されています。対象となるのは居住用住宅であり、海外投資家による住宅購入を抑制することが目的です。
この政策は住宅価格の急上昇に対応するために導入されました。住宅価格の高騰により、国内居住者が住宅を購入しにくくなっているという社会問題が背景にあります。
ただし、開発プロジェクトや新築住宅については一定の例外が設けられています。
欧州の制度――税制による調整
欧州では、外国人の不動産取得を直接禁止する制度よりも、税制を通じて調整する政策が多く見られます。
例えば、外国人による住宅購入に追加税を課す制度が導入されている国があります。投資目的の不動産取得に対して税負担を高めることで、投機的な取引を抑制する仕組みです。
また、空き家に対する課税を強化する制度も導入されています。住宅を投資目的で保有しながら実際には使用しないケースを減らすことが目的です。
このように、欧州では市場メカニズムを活用した政策が採用されることが多いと言えます。
日本の制度との違い
海外の制度と比較すると、日本の土地制度にはいくつかの特徴があります。
第一に、外国人による土地取得が原則として自由であることです。多くの国が住宅市場や安全保障の観点から一定の制限を設けているのに対し、日本では包括的な規制は存在していません。
第二に、規制の焦点が土地取得ではなく土地利用に置かれている点です。日本の重要土地利用規制法は、土地の所有者の国籍ではなく土地利用の内容を監視する制度として設計されています。
このような制度設計は、国際ルールとの整合性を考慮した結果であると考えられます。
結論
外国人による土地取得をめぐる制度は、各国の政策目的によって大きく異なります。
住宅価格の高騰が問題となっている国では、外国人による住宅購入を制限する制度が導入されています。一方で、外国投資を重視する国では比較的自由な制度が維持されています。
日本では外国人による土地取得は原則自由ですが、安全保障の観点から土地利用を監視する制度が整備されています。今後、住宅市場や安全保障の状況によって、日本の土地制度も見直しが検討される可能性があります。
外国人の土地取得をめぐる政策は、不動産市場、投資政策、安全保障といった複数の政策領域が交差するテーマであり、各国の制度を比較することで政策の選択肢を理解することができると言えるでしょう。
参考
日本経済新聞「土地取得規制の可否を議論 外国人政策 有識者会議が初会合」2026年3月5日
カナダ政府「外国人住宅購入禁止法」
オーストラリア政府「外国投資審査制度」
ニュージーランド政府「海外投資法改正」
