少子高齢化が進む日本で、労働力を支える外国人の存在が急速に拡大しています。
介護や製造、サービス業などあらゆる分野で外国人労働者が不可欠となる一方で、社会保障制度の整備は追いついていません。
国民健康保険や年金、生活支援の仕組みをどう包摂的に設計するかは、共生社会の成否を左右します。
現場で起きていること
東京都新宿区では、国民健康保険の未納率が3割に達し、背景には外国人の加入・納付管理の難しさがあります。
短期滞在や転職、転出入の多さにより、加入と脱退の手続きが追いつかず、結果として「宙に浮いた保険証」や未納が発生します。
言語の壁や制度理解の不足が、行政側・本人側双方に課題を残しています。
一方、介護や医療現場では、外国人職員が不可欠な存在になっています。
彼ら自身が社会保険に加入し、税や保険料を負担する立場でもありながら、いざ家族を日本に呼び寄せると、社会保障制度の壁に直面するケースもあります。
「支える側でもあり、支えを必要とする側でもある」――この二重性が、共生社会のリアルな課題を浮き彫りにしています。
制度の狭間にある不公平
現在、外国人労働者は在留資格によって社会保障への加入義務が異なります。
技能実習や特定技能では加入していても、帰国時に年金を十分に受け取れないケースが多く、「掛け捨て」感覚が広がっています。
生活保護の対象も原則として永住者に限定されており、一時的な失業や病気の際には支援の網が届かないことがあります。
結果として、労働力としては頼りながら、生活者としては十分に支えられないという「ねじれ」が生じています。
支え合いの地域モデル
一方、地方自治体では新しい動きも始まっています。
浜松市や多文化共生先進都市の川口市では、外国人相談窓口の常設化、母語での医療案内、子どもの就学支援など、地域ぐるみの支援が進んでいます。
医療通訳や生活支援NPOとの連携を通じて、「制度に届かない人を支える」動きが地域レベルで芽生えています。
こうした取り組みは、単なる外国人支援ではなく、すべての人が社会保障の安全網の中に包まれるという「共生型福祉社会」の先行事例といえます。
結論
社会保障の再設計は、日本人か外国人かを問わず、「ここで生きる人」をどう支えるかという問いに行き着きます。
外国人を単なる労働力として扱うのではなく、共に地域を築く生活者として迎え入れること。
それが共生社会の基本理念であり、社会保障の新たな使命です。
高市政権が進める「責任ある積極財政」においても、外国人を含めた包括的な支援策が求められます。
税と保険料を通じて社会を支えるすべての人に、適切なセーフティネットを保障できるか。
共生社会の実現は、日本の持続可能性そのものを試す課題です。
出典
・日本経済新聞「外国人政策と社会保障」(2025年11月)
・総務省「多文化共生推進プラン」
・法務省「特定技能制度の現状」
・厚生労働省「社会保障審議会 外国人支援WG」
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。
