外国人と東京 ― 一極集中のリアル(第4回)成功事例から学ぶ:インド人コミュニティの共生

FP
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東京都江戸川区・西葛西。東京メトロ東西線の駅を降りると、カレー店やインド食材店、ヒンドゥー寺院が目に入り、独特の国際色を感じます。
この街は「リトル・インディア」と呼ばれ、いまや全国的にも知られる存在です。

インド人が西葛西に集住するようになったのは2000年前後。IT技術者として来日した人たちが家族とともに住み始め、その後口コミでコミュニティが広がりました。現在、西葛西周辺のインド人人口は中国に次いで区内2番目の規模になっています。


最初は戸惑いから始まった

もちろん、最初から共生がうまくいっていたわけではありません。インド人が急増した当初は、地域住民から戸惑いや違和感の声が上がりました。

  • 「見慣れない言葉が街にあふれている」
  • 「インド人ばかりのグループが固まって歩いていて怖い」
  • 「宗教施設の音やイベントがにぎやかすぎる」

こうした声は、ネパール人が増えている現在の江戸川区の課題と重なります。やはり「急な変化」には地域住民が不安を抱くのです。


地域活動への積極参加

西葛西のインド人コミュニティが特筆すべきなのは、こうした違和感を解消するために 地域活動に積極的に参加してきた ことです。

例えば、地域の祭りやイベント。インド人は「お客さん」として参加するのではなく、実行委員や運営スタッフ として汗をかくようになりました。日本人住民と肩を並べて準備や片付けをするうちに、「あの人は信頼できる」という関係が少しずつ築かれていったのです。

また、子どもたちが日本の学校に通う中で、保護者同士の交流も生まれました。給食や行事を通じて文化の違いを理解し合い、「違うけれど共に暮らす」感覚が育まれていったのです。


多文化共生センターの開設

2024年10月、江戸川区は「多文化共生センター」を区内に開設しました。ここでは日本語教育の支援や生活相談の窓口が設けられ、外国人と地域住民をつなぐ拠点として機能しています。

西葛西で長年にわたって積み上げられてきた共生の経験が、このセンター設立の背景にあります。行政が「外国人を支援する存在」から「地域の仲間として共に暮らす存在」へと視点を変えた結果とも言えます。


共生が生んだ相互理解

西葛西の街では、インド文化が地域に溶け込みつつあります。

  • 地元の商店街でインド料理フェスティバルが開催され、日本人住民も楽しむ
  • 小学校の授業でインド文化を紹介する機会がつくられる
  • 日本人とインド人が合同で地域清掃に参加する

こうした積み重ねの結果、SNS上にもポジティブな声が増えてきました。

  • 「西葛西のインド料理、本格的で美味しい!」
  • 「お祭りでインド舞踊を見られて得した気分」
  • 「インド人の友人ができて、子どもの視野が広がった」

最初は「よそ者」だったはずのインド人が、今では「街を一緒につくる仲間」として受け入れられているのです。


成功の要因は「時間」と「歩み寄り」

西葛西の事例が示すのは、共生には 時間歩み寄り が不可欠だということです。

  • 外国人が地域に積極的に参加する姿勢を持つ
  • 日本人住民が文化の違いを理解しようとする
  • 行政がその橋渡し役となる

この三つが揃って初めて「共生」は現実のものになります。

ネパール人が急増する江戸川区の状況も、西葛西の経験を活かせば乗り越えられるはずです。「摩擦」と「交流」は表裏一体。大切なのは、互いに向き合う時間をかけることなのです。


第4回のまとめ

  • 江戸川区・西葛西には「リトル・インディア」と呼ばれる大規模なインド人コミュニティが形成されている
  • 当初は戸惑いや違和感があったが、地域活動への積極参加で信頼関係を構築
  • 祭りや学校行事、地域清掃などを通じて相互理解が進んだ
  • 行政も多文化共生センターを開設し、支援から「共生」へと視点を転換
  • 成功の要因は「時間」と「歩み寄り」にあり、他のコミュニティにも応用可能

おわりに

西葛西のインド人コミュニティは、東京における「外国人との共生」の成功モデルの一つです。
違いがあるからこそ摩擦もありますが、時間をかけた歩み寄りは確実に相互理解を生み出します。

次回(第5回)は、江戸川区が試算する「2100年には区民の5人に1人が外国人」という未来像を手がかりに、東京全体の外国人政策と共生の方向性を考えます。


📌 参考:
「東京一極集中の実相 <3> 人口増9万人、8割外国人」日本経済新聞(2025年10月2日付)


という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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