AIが利用者の代わりに検索し、比較し、入力や手続きを進める「AIエージェント」が現実のものとなりつつあります。
こうした動きは、一般の生活者だけでなく、税理士・弁護士・社会保険労務士・司法書士といった士業や、コンサルタントなどの専門職にも直接影響を及ぼします。
「仕事を奪われるのではないか」という不安と、「使いこなせば強力な武器になる」という期待。
本稿では、士業・専門職の視点から、AIエージェントがもたらす脅威と活用の可能性を整理します。
1.AIエージェントは士業の何を代替するのか
まず冷静に整理すべきは、「すべての業務が奪われるわけではない」という点です。
AIエージェントが得意とするのは、以下のような領域です。
・情報収集(制度・手続・要件の整理)
・比較検討(選択肢の洗い出し)
・定型入力(申請フォーム、予約、登録作業)
・スケジュール調整や進捗管理
これは、士業業務の中でも補助的・事務的な部分に集中しています。
逆に言えば、これまで専門職が時間を取られてきた「単価になりにくい作業」が、AIに置き換わりやすい領域です。
2.「無料相談」が崩れる可能性
AIエージェントの普及がもたらす最大の脅威は、業務量の減少ではなく、相談の前段階が消えることです。
これまで多くの士業事務所では、
「制度の説明」「一般論の整理」「選択肢の提示」といった部分を、実質的に無料または低価格で提供してきました。
しかしAIエージェントは、こうした初期対応を高速かつ低コストでこなします。
生活者から見れば、
「まずAIに聞いて、ある程度わかってから専門家に相談する」
という行動が当たり前になります。
結果として、
・相談件数は減る
・相談のレベルは上がる
という変化が起きやすくなります。
3.専門職が担う領域はどこに残るのか
では、士業はどこで価値を発揮できるのでしょうか。
ポイントは、「判断」と「責任」です。
AIエージェントは、過去データや一般論をもとに最適解を提示しますが、
個別事情を踏まえた最終判断を下す責任は負いません。
例えば税務であれば、
・どこまでリスクを取るか
・調査対応をどう想定するか
・将来の制度改正をどう織り込むか
こうした判断は、依然として人間の専門家に委ねられます。
AIが示すのは「選択肢」であり、「覚悟を伴う決断」ではありません。
4.AIエージェントを「敵」にしない活用法
重要なのは、AIを排除するのではなく、自分の業務に組み込むことです。
具体的には、次のような使い方が考えられます。
・初期ヒアリングの自動化
・資料収集・整理の効率化
・複数制度の横断比較
・顧問先向けの事前シミュレーション
AIエージェントを「下働きの秘書」として使い、
専門家は判断・説明・責任の部分に集中する。
これにより、同じ時間でも提供できる価値は大きくなります。
5.巨大プラットフォームとの距離感
注意すべきは、AIエージェントの多くが巨大IT企業の提供する基盤上にある点です。
OpenAI、Google、Microsoftなどは、
検索、メール、カレンダー、文書管理を一体で押さえようとしています。
これは裏を返せば、
「生活者との接点」を誰が握るかの競争でもあります。
士業がプラットフォームに依存しすぎれば、
集客や価格決定の主導権を失うリスクもあります。
AIを使う一方で、「自分に直接相談する理由」を言語化しておくことが欠かせません。
6.専門職の価値は「説明力」に集約される
AI時代において、専門知識そのものはコモディティ化します。
しかし、
・なぜその選択が妥当なのか
・どこにリスクがあるのか
・どこまで安心できるのか
これを相手の立場に合わせて説明できる力は、簡単には代替されません。
専門職の価値は、
「知っていること」から
「納得させられること」へ
確実に移っています。
結論
AIエージェントは、士業・専門職の仕事を奪う存在ではありません。
しかし、仕事の中身を確実に変える存在です。
単純作業や一般論の説明に留まっていれば、役割は縮小します。
一方で、AIを使いこなし、判断と責任に集中できる専門職は、
むしろ付加価値を高めることができます。
これからの士業に求められるのは、
AIと競うことではなく、
AIを前提にした専門性の再定義です。
参考
・日本経済新聞
「閲覧ソフト、AI企業も参入 『秘書』機能で新たな競争 グーグルの牙城なお堅く」
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。
