少子高齢化が進む中で、「地域で支え合う」仕組みの再構築が急務となっています。
かつて地域包括ケアは、高齢者の介護や医療を中心に設計されてきました。
しかし、現代の課題はそれだけではありません。
子育て支援、就労支援、孤立防止――あらゆる世代をつなぐ「多世代型の地域包括ケア」への転換が求められています。
高齢化と地域の限界
高齢者の増加とともに、介護サービスの需要は年々高まっています。
一方で、介護職員の人手不足や、担い手となる家族の減少が進み、「支える側」の疲弊が目立ちます。
介護施設が満床で在宅ケアを余儀なくされるケースも増え、地域全体で支援体制を整える必要性が高まっています。
かつての地域包括ケアは「医療・介護・福祉の連携」が中心でしたが、今やそれだけでは生活を支えきれません。
独居高齢者の孤立、介護離職、子育て世代の負担――これらの課題は一続きの問題として現れています。
「多世代型」への転換
近年注目されているのが、多世代が同じ地域で支え合う「多世代包括ケア」モデルです。
高齢者が子どもの見守りを行い、若い世代がデジタル支援で高齢者の生活を助けるといった“相互支援”の取り組みが始まっています。
たとえば長野県飯田市では、地域の福祉拠点を中心に、子育て支援・就労支援・高齢者ケアを一体的に提供する体制を構築しています。
「支える・支えられる」という関係を固定せず、世代を超えて「助け合う循環」を生み出すことが目的です。
就労支援とケアの両立
働きながら介護や子育てを担う世帯が増え、地域包括ケアには「働く人を支える視点」も不可欠です。
企業では介護休業や短時間勤務制度の導入が進みつつありますが、現実には職場復帰や所得維持が難しい例も多いのが実情です。
行政と企業が連携し、地域の就労支援センターや職業訓練機関が「ケアと仕事の両立」を支える仕組みを強化する動きが見られます。
たとえば大阪府豊中市では、地域包括支援センターとハローワークが連携し、介護を抱える世帯への柔軟な職業支援を行っています。
このような“ケアと雇用の橋渡し”が、多世代包括ケアの新しい柱となりつつあります。
コミュニティ再生と自治の力
地域包括ケアの基盤は、行政だけではなく「地域の力」にあります。
自治会やNPO、社会福祉協議会、ボランティアなど、多様な主体が連携することが、制度を超えた支え合いを可能にします。
ただし、地域差は大きく、都市部では人間関係の希薄化、地方では人口減少が課題です。
最近では、デジタル技術を活用した「オンライン見守り」「地域アプリ」「ボランティアマッチング」など、新しい形の地域支援が広がっています。
「顔の見える支援」と「データによる支援」をどう組み合わせるかが、次世代型の包括ケアの鍵となります。
結論
地域包括ケアは、もはや高齢者だけのものではありません。
子どもから高齢者まで、誰もが地域の一員として支え合う“多世代型モデル”へと進化する時期に来ています。
行政の制度だけに頼らず、地域・企業・市民がそれぞれの立場から参加し、つながりを再生していくこと。
それが、共生社会を実現するための新たな社会保障のかたちです。
高市政権が進める「責任ある積極財政」も、こうした地域の現場と連動してこそ真価を発揮します。
国の制度設計と地域の創意工夫がかみ合うとき、社会保障は“持続可能な共助のネットワーク”へと変わっていくでしょう。
出典
・厚生労働省「地域包括ケアシステム推進会議」
・日本経済新聞「共生社会と社会保障」シリーズ(2025年)
・総務省「地域共生社会の実現に向けた取組状況」
・飯田市「多世代包括支援モデル事業」
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。
