■「中央集権の日本」から「分散する日本」へ
かつて日本は、「東京に集まり、東京で働く」国でした。
経済・政治・情報――すべてが首都圏に集中し、
地方は“補完装置”としての役割に甘んじてきました。
しかし2040年を迎える頃、
人口減少・財政制約・インフラ維持の限界が進み、
「中央が支える国家」から「地域が自ら立つ社会」へと転換が始まります。
この流れを象徴するのが、
「小さな国家モデル」=地域単位で完結する共助社会です。
■「小さな国家モデル」とは何か
「小さな国家モデル」とは、
国の枠組みの中に、自治・経済・福祉が循環する“地域国家”を築く考え方です。
- 税や社会保障の一部を地域単位で設計
- エネルギー・食料・雇用を地域で自給
- 福祉や教育も行政と住民が共同運営
つまり、「国のミニチュア版」を各地域に分散させる構想です。
“東京に頼らずに生きられる社会”を各地につくる。
それが「小さな国家モデル」の目的です。
■地域通貨・地域ファンドが支える“共助経済”
全国の自治体ではすでに、地域独自の通貨・ファンド・協働組織が動き始めています。
- 長野県飯山市の「iiyamaコイン」:地域商店での利用促進
- 徳島県神山町の「グリーンバレー構想」:移住と起業を支援
- 北海道下川町の「まちづくり会社」:地域内エネルギー循環
- 熊本県南小国町の「ふるさと共創基金」:住民投資型の地域再生
これらは単なる地域振興ではなく、「経済と福祉の自給圏」をめざす実験です。
地域通貨やファンドが動けば、地域の中で
- 購買
- 投資
- 労働
- 福祉
が循環します。
そこに国や大企業がいなくても、地域経済が“生き物”のように回り始めるのです。
■「共助圏」という新しい社会単位
2040年の日本を特徴づけるのは、「共助圏(Community of Mutual Support)」という新しい単位です。
| 概念 | 内容 | 主な担い手 |
|---|---|---|
| 自助圏 | 個人の努力・家計の範囲 | 個人・家族 |
| 公助圏 | 国や自治体による支援 | 政府・行政 |
| 共助圏 | 地域・企業・個人の協働 | 住民・NPO・地元企業 |
つまり、
「地域単位の共助」が、国全体を支える骨格になる。
災害時の支え合い、医療・介護の連携、教育や起業の協働――
行政がすべてを担うのではなく、地域住民と地元企業が一緒に“社会を運営”していく。
それが、小さな国家モデルの核心です。
■テクノロジーが「分散型社会」を支える
AI・ブロックチェーン・地域IDなどの技術革新により、
小さな単位の行政・経済運営が可能になっています。
🔹 具体例
- マイナンバー+自治体アプリで、給付や納税を地域単位に自動管理
- ブロックチェーンで地域通貨の不正利用を防止
- AI分析により、介護・医療・教育支援をデータ連携
これらは、テクノロジーによって“分権”を安全に実現する仕組みです。
「分ける=弱くなる」ではなく、
「分ける=しなやかになる」社会へ。
■FP・税理士の視点:地域における“社会設計士”としての役割
こうした地域単位の社会が進む中で、
税理士やFPは「地域の社会設計士」として新たな役割を担います。
- 地域通貨や共助ポイントの税務設計
- 地元企業・個人事業主の支援ネットワーク構築
- 移住・副業・兼業人材の税・社会保険サポート
- 共助ファンドの運営・会計・透明性確保
地域経済の仕組みが複雑化するほど、
中立的に制度と生活をつなぐ“地域の専門職”が不可欠になります。
特に、共助経済の「信頼の担保者」として、税理士・FPの存在意義はさらに高まるでしょう。
■まとめ:国家の縮小は、地域の拡張へ
人口減少や財政制約は、
日本の「中央集権モデル」を終わらせるかもしれません。
しかし、
国家の縮小は、地域の拡張の始まりです。
- 国家は「方向」を示し、
- 地域が「現場」を動かし、
- 市民が「実践」を担う。
その三層が重なって初めて、2040年の日本は持続します。
“東京に頼らない幸福”を、地方がつくる。
“分散した社会”が、むしろ強くなる。
そこにこそ、これからの日本の希望があります。
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。

