近年、海外資産を保有する個人が着実に増えています。
その動きを裏付けるように、国税庁が公表した令和6年分の国外財産調書の提出状況では、提出件数・総財産額ともに過去最高を更新しました。
国外財産調書は、単なる届出制度ではなく、所得税・相続税の加算税に直接影響する重要な制度です。
本記事では、最新の公表データを整理しながら、提出件数が増加している背景と、実務上注意すべきポイントを確認していきます。
国外財産調書の提出状況は過去最高
令和6年分の国外財産調書の提出件数は1万4544件で、前年から9.8%増加しました。
また、総財産額は8兆1945億円となり、前年比26.3%増と大きく伸びています。
特に注目されるのは、財産の種類別内訳です。
有価証券が5兆4817億円と全体の約7割を占め、前年から34.0%増加しています。
この背景として、
・海外株式市場の株価上昇
・円安による外貨建資産の円換算額の増加
が重なったことが挙げられます。
その結果、これまで提出義務がなかった層が、新たに国外財産調書の提出対象となったと考えられます。
提出者は都市部に集中している
局別の提出状況を見ると、東京局管内が全体の63.7%を占めています。
総財産額ベースでは、その割合はさらに高く、東京局だけで全体の80.6%に達しています。
大阪局、名古屋局が続くものの、資産規模・件数ともに首都圏への集中が顕著です。
海外証券投資や海外不動産投資が、主に都市部の富裕層を中心に広がっている実態が読み取れます。
提出しないと「加重」、提出していれば「軽減」
国外財産調書制度の重要な特徴は、加算税の加重・軽減措置がある点です。
国外財産調書を提出していない、または記載漏れがある状態で申告漏れが判明した場合、
過少申告加算税や無申告加算税が5%加重されます。
令和6事務年度では、加重措置の適用件数は366件となり、前年より増加しました。
増差所得等金額も169億円超と大幅に増えています。
一方で、国外財産調書に正しく記載されていた国外財産に関する申告漏れについては、
加算税を5%軽減する措置が適用されます。
こちらも221件と前年より増加しており、
「提出していたかどうか」で税負担に明確な差が生じていることがわかります。
具体事例に見る税務調査の実態
公表された事例からは、調査の着眼点も見えてきます。
あるケースでは、国外送金等調書を端緒として調査が行われ、
海外不動産の売却収入を申告していなかったことが判明しました。
国外財産調書も未提出だったため、加重措置が適用され、多額の追徴課税につながっています。
一方、国外財産調書に海外預金口座の存在を記載していたケースでは、
利子や為替差益の申告漏れはあったものの、軽減措置が適用されています。
この対比からも、
「申告が完全であること」よりも
「国外財産調書を適切に提出していること」
が、実務上きわめて重要であることがわかります。
結論
円安と株高が続く環境では、意識しないまま国外財産調書の提出義務者になるケースが増えています。
特に海外証券投資を行っている場合、評価額の変動だけで基準額を超えることも珍しくありません。
国外財産調書は、提出しないこと自体がリスクとなり、
一方で、正しく提出していれば税務上の不利を軽減する「防御策」にもなります。
今後、海外資産を保有する個人に対する税務当局の関心は、さらに高まっていくと考えられます。
「自分は対象外だろう」と思い込まず、早めに制度の確認と対応を行うことが重要です。
参考
・国税庁「国外財産調書の提出状況について(令和6年分)」
・税のしるべ(2026年2月2日)掲載記事
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。
