総務省の人口推計によれば、65歳以上の高齢者は3619万人。今や国民の約3割が高齢者という時代です。
そして注目すべきは「一人暮らしの高齢者」が年々増えていること。
働く場の確保と並んで、安心して暮らせる住まいの確保は社会の大きな課題になっています。
今回は、単身高齢者の増加がもたらす現実と、住宅・生活支援の両面から考えてみましょう。
単身高齢者が増える背景
- 未婚率の上昇
生涯未婚率は男女ともに上昇。結婚せず一人で年齢を重ねる人が増えている。 - 離婚・死別の増加
熟年離婚や配偶者の死により、高齢期に単身となるケースが多い。 - 長寿化
夫婦で暮らしていても、平均寿命の差から最終的にどちらかが一人になる確率が高い。
その結果、都市部でも地方でも「単身高齢者の生活」が当たり前になりつつあります。
住まいに関する現実的な課題
- 賃貸住宅の入居拒否
「高齢者は病気や孤独死のリスクがある」として、賃貸契約を断られるケースがある。 - 持ち家の老朽化
空き家問題の一因でもある。維持管理が難しくなり、暮らしの安全性が損なわれる。 - 医療・介護との距離
郊外や地方で暮らす高齢者にとって、病院や介護サービスへのアクセスが課題となる。 - 孤立と緊急時対応
一人暮らしでは、急病や災害時に助けを得にくい。見守り体制が不可欠。
改正住宅セーフティネット法の役割
2025年10月には改正住宅セーフティネット法が施行されます。
- 高齢者や低所得者が借りやすい住宅の登録制度を拡充
- 残置物処分を円滑にし、大家側の不安を軽減
- 自治体による支援体制を強化
「高齢だから借りられない」という壁を低くし、安心して暮らせる住まいを確保することが狙いです。
多様化する住まいの選択肢
- サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)
バリアフリー設計+安否確認・生活相談サービス付き。比較的自立した人向け。 - シェアハウス型の住まい
他の高齢者や若者と共同生活し、孤立を防ぐ。世代間交流の場としても注目。 - 地域包括ケアと連携した住宅
自宅で暮らしながら、医療・介護・生活支援を地域で受けられる仕組み。 - 持ち家のリフォーム・住み替え
老朽化した持ち家をリフォームするか、利便性の高いエリアに住み替えるかの判断も重要。
税理士・FPの視点 ― 住まいとお金の問題
住まいの確保は「経済設計」と切り離せません。
- 年金+就労収入で「家賃を払えるか」
- 自宅を売却して「住み替え資金を確保するか」
- リバースモーゲージ(自宅を担保に老後資金を得る制度)の活用可能性
- 将来の相続や「空き家問題」への備え
安心して暮らせる住まいは、資金計画とセットで考える必要があります。
まとめ
単身高齢者の増加は避けられない現実です。
だからこそ「住まいをどう確保するか」が人生後半の最重要テーマの一つになります。
- 安全で快適な住環境
- 医療・介護サービスとの連携
- 孤立を防ぐ仕組み
- 経済的に持続可能な設計
この4つを意識することで、「一人暮らし=不安」から「一人暮らし=自由で安心」へと発想を転換できるのではないでしょうか。
📌 参考:日本経済新聞(2025年9月15日朝刊)、改正住宅セーフティネット法関連資料
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。
