深夜に仕事が終わった翌日、朝9時からまた通常どおり出社する。
この働き方は本当に持続可能でしょうか。
いま議論が進んでいる「勤務間インターバル」は、終業から次の始業まで一定時間を空ける制度です。欧州では原則11時間が法的に義務付けられていますが、日本では努力義務にとどまっています。
過労死防止、メンタルヘルス対策、生産性向上。
制度の目的は明確ですが、企業側には慎重論もあります。
本稿では、勤務間インターバル制度の現状、義務化論点、そして中小企業・ひとり社長の立場からどう考えるべきかを整理します。
1.勤務間インターバルとは何か
勤務間インターバルとは、
終業から次の始業までに一定時間以上の休息を確保する制度です。
例えば原則11時間の場合、
- 23時に退勤 → 翌日の始業は10時以降
- 24時退勤 → 翌日は11時以降
という考え方になります。
2018年改正の労働時間等設定改善法により、日本では努力義務となりました。しかし導入率は依然として低水準にとどまり、とくに中小企業で普及が進んでいません。
2.欧州の11時間ルール
欧州では勤務間インターバルは原則11時間が一般的です。
- イギリス
- フランス
- ドイツ
これらの国では、労働時間指令に基づき法的義務とされています。
残業時間の上限規制とは異なり、「最低限の休息時間を確保する」という発想に特徴があります。
3.なぜ今、義務化議論なのか
背景には過労死問題があります。
時間外労働の上限規制が導入された後も、
- 深夜まで残業
- 翌朝通常出社
- 慢性的な睡眠不足
といった働き方は現実に存在します。
勤務間インターバルは、こうした状況に対する「最後の歯止め」として位置付けられています。
厚生労働省の研究会は法規制強化の検討を提言し、労働政策審議会でも原則11時間の義務化や配慮義務化などが議論されています。
4.企業側の慎重論
経営側からは、
- 災害対応
- 突発的トラブル
- 繁忙期対応
- シフト制業種の特殊事情
といった現実的な課題が指摘されています。
とくに人手不足が深刻な中小企業では、制度設計の柔軟性が重要な論点となります。
5.中小企業・ひとり社長の視点
勤務間インターバルは単なる規制ではありません。
- 人材確保
- 離職率の低下
- 健康経営
- 企業ブランド
といった経営戦略とも直結します。
また、ひとり社長や士業にとっても、自身の働き方設計の問題として無関係ではありません。過重労働が続けば、判断力や業務品質にも影響が及びます。
結論
勤務間インターバルの議論は、「どこまで働かせるか」ではなく、「どこまで休ませるか」という発想への転換を求めています。
義務化の是非だけでなく、企業の持続可能性、労働者の健康、社会全体の生産性という観点から、今後の制度設計を注視する必要があります。
参考
・日本経済新聞「働き方改革の現在地(2) 深夜に終業、出社は何時?」2026年2月12日朝刊
・厚生労働省「勤務間インターバル制度導入促進のためのガイドライン」
・厚生労働省 労働時間等設定改善法(平成30年改正)関連資料
・EU Working Time Directive(労働時間指令)関連資料
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。
