老齢厚生年金を受け取る際に、扶養する配偶者や子どもがいると「加給年金」が上乗せされる――。
これはまさに“年金版の家族手当”とも言える仕組みです。
現役時代に家族手当をもらっていた方も、年金になってからは意外と知られていないのがこの制度。
しかも、2025年6月に成立した「年金制度改正法」で、加算額や対象範囲が見直されることになりました。
ここでは、改正前後の違いをわかりやすく整理します。
🏠 加給年金とは?
加給年金は、厚生年金の被保険者期間が20年以上あるなどの条件を満たし、
65歳に到達したときに65歳未満の配偶者や18歳未満の子どもを扶養している場合に上乗せ支給される制度です。
つまり、年の差夫婦などでは「夫(妻)の年金額が家族手当的に増える」仕組みといえます。
【対象となる主な条件】
- 厚生年金被保険者期間が20年以上
- 65歳未満の配偶者または18歳未満の子がいる
- 生計維持関係(同居または生活費援助など)がある
- 配偶者・子の前年収が850万円未満(所得655.5万円未満)
- 配偶者の厚生年金加入期間が20年未満
なお、事実婚の場合でも、生計維持関係を証明できれば対象になります。
💰 現行制度の加算額
2025年度時点では、配偶者に対して年23万9,300円が加算されます。
さらに「特別加算」として、生年月日に応じて最大17万6,600円が上乗せされ、
合計で年41万5,900円の加給年金が支給されることになります(2025年度価格)。
また、子どもへの加算額は
- 第1子・第2子:各年23万9,300円
- 第3子以降:各年7万9,800円
と定められています。
🔁 妻(夫)が65歳になると「振替加算」に切り替わる
加給年金を受けていた配偶者が65歳に到達し、本人が老齢基礎年金を受け取るようになると、
加給年金は停止され、代わりに振替加算が付与されます。
振替加算は、1926年4月2日~1966年4月1日生まれの配偶者に限られ、
加算額は生年月日によって段階的に減額されます。
1966年4月2日以降生まれの方は振替加算ゼロとなり、この制度自体が終わりを迎えつつあります。
🧭 2025年改正でどう変わる?
【1】配偶者への加算は縮小へ
2028年4月から、共働き世帯の増加を踏まえ、
「年下配偶者への加算」が段階的に縮小されます。
- 現行:最大年41万5,900円
- 改正後:年37万4,200円(約90%水準)
ただし、すでに加給年金を受けている方や障害年金の受給者は現行額が維持されます。
【2】子どもへの加算は引き上げ
一方、子どもに対する加算は手厚くなります。
- 現行:第3子以降7万9,800円
- 改正後:第1子・第2子と同じく28万7,100円(約120%水準)
さらに、これまで対象外だった老齢基礎年金や遺族厚生年金の受給者にも、
子ども加算が認められるようになります。
ただし、基礎年金と厚生年金の双方で要件を満たす場合は、厚生年金が優先されます。
⚠️ 支給停止の注意点
加給年金は知らぬ間に「支給停止」となることがあります。
以下のケースに該当すると停止されます。
- 配偶者が65歳に到達した
- 子どもが18歳に到達した年度末を過ぎた
- 生計維持関係がなくなった(離婚・別居など)
- 配偶者が障害年金を受給するようになった
また、2022年4月以降は、配偶者が厚生年金の受給権を得た時点で停止となります。
(実際に受け取っていなくても支給停止になる点に注意)
なお、離婚・死別などで支給停止要件に該当した場合、
届け出を怠ると過払い金の返還請求を受けるリスクがあります。
⏳ 繰り下げ受給との関係
年金を繰り下げて受け取る場合、
加給年金や振替加算は増額の対象になりません。
また、繰り下げ中(受け取り待機中)は、
加給年金や振替加算自体を受け取ることもできないため注意が必要です。
📝 まとめ ― “年の差夫婦”ほど確認を
加給年金は、年の差夫婦や子どもを扶養している家庭にとって、
実はかなり大きな支えとなる制度です。
ただし、
- 「ねんきん定期便」には記載されない
- 支給停止のタイミングが複雑
といった理由から、知らぬうちに減額されてしまうケースもあります。
改正後は、「配偶者加算の縮小」と「子ども加算の拡充」が同時に進みます。
制度の趣旨が「家族支援」から「子育て支援」へと重心を移しつつある点にも注目です。
🧾 出典・参考
- 日本年金機構「加給年金額と振替加算」
- 厚生労働省「社会経済の変化を踏まえた年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する等の法律の概要」
- 日本FP協会公式コラム
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。

