副業が広がらない理由 残業扱いという制度の壁

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働き方改革の一環として、副業・兼業の促進が掲げられて久しくなりました。政府も制度面での後押しを続けていますが、実際には副業を認める企業も、副業を行う労働者も大きく増えてはいません。
その背景には、単なる企業文化や意識の問題ではなく、労働時間と賃金をめぐる制度上の構造的な壁が存在しています。特に「副業が残業として扱われる仕組み」は、普及を妨げる大きな要因となっています。

副業は本当に広がっているのか

厚生労働省の調査によると、副業・兼業を何らかの形で認めている事業所は全体の4割に満たず、副業を実際に行っている労働者は1割にも届いていません。
医療・福祉、宿泊・飲食サービスなど一部の業種では副業が比較的浸透していますが、製造業などでは慎重な姿勢が根強く残っています。

制度として認められていても、実務上の負担やリスクを理由に、企業が積極的に解禁しないケースが少なくないのが実情です。

副業が「残業」になる仕組み

副業を難しくしている最大の要因の一つが、割増賃金の考え方です。
現行制度では、労働時間は事業所をまたいで通算して管理されます。本業で1日8時間、週40時間を超えて働いた後に副業を行うと、副業先での労働時間はすべて「時間外労働」とみなされます。

その結果、副業先の事業者は、通常の賃金に25%以上の割増賃金を上乗せして支払う必要があります。
副業を受け入れる側にとっては、人件費負担が読みにくく、結果として副業人材の活用を敬遠する要因となっています。

制度見直しの議論

この点について、厚生労働省の研究会では見直しの方向性が示されています。
健康確保の観点から労働時間の通算管理は維持しつつ、割増賃金については「職場ごとに計算する仕組み」を検討すべきだという考え方です。

海外に目を向けると、割増賃金を法律で厳格に定めず、労使の取り決めに委ねている国も少なくありません。
日本と同様に法律で定めている国であっても、本業と副業を分けて残業代を計算する仕組みが採られている例があります。

「働き過ぎ」への懸念

一方で、副業の拡大が長時間労働につながるのではないかという懸念も根強くあります。
実際、本業と副業を合わせた労働時間は、平均で週40時間を超えています。副業の理由としては「収入を増やしたい」「1つの仕事だけでは生活できない」といった経済的理由が多くを占めています。

副業がキャリア形成や自己実現の手段ではなく、生活維持のための選択肢になっているケースも少なくありません。この点を無視して制度だけを緩めれば、結果として過重労働を助長しかねません。

副業を把握できない現実

もう一つの問題が、企業側が副業の実態を把握しにくい点です。
副業をしていることを本業の会社に知らせていない労働者も一定数存在します。申告がなければ、企業は労働時間の把握も健康管理もできません。

副業の自由を尊重しつつ、健康確保のためにどこまで報告を求めるべきか。この点も今後の重要な論点です。

結論

副業が広がらない背景には、「やる気」や「意識」の問題だけではなく、割増賃金制度という構造的な壁があります。
制度を見直すのであれば、企業の負担軽減だけでなく、労働者の健康確保や生活実態にも目を向けたバランスの取れた設計が不可欠です。

副業を「自己実現の選択肢」として根付かせるのか、それとも「生活防衛の手段」にとどめるのか。
働き方改革は、今まさにその分岐点に立っています。

参考

・日本経済新聞「働き方改革の現在地 副業、『残業扱い』が普及阻む」
・厚生労働省 副業・兼業に関する各種調査・研究会資料


という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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