インド株式市場は、政府の大型減税に加えて「金融政策」にも注目が集まっています。物価上昇率が低下していることを背景に、インド準備銀行(RBI)が年内にも利下げを再開するのではないかとの期待が高まっているのです。本稿では、利下げの可能性と株価への影響を整理します。
インフレ鈍化が利下げ余地を生む
直近の7月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比 +1.61% と、約8年ぶりの低水準となりました。インフレ率がここまで低下したのは、食品価格や燃料価格の落ち着きが大きく寄与しています。
インフレが安定すれば、中央銀行は利下げという景気刺激策を打ちやすくなります。実際、RBIはすでに今年2月に利下げを実施し、6年ぶりに利下げサイクルへと転じました。ただ、政策効果を見極めるために一時的に様子見をしている状況です。
市場に広がる利下げ観測
市場では次のような見通しが出ています。
- コンセンサス予想:年内に0.25%の利下げ再開
- 強気シナリオ:景気下押し圧力を踏まえ0.5%引き下げ、政策金利を5.0%にする可能性(英キャピタル・エコノミクス)
つまり、RBIが利下げに動くかどうかは、景気下押し圧力とインフレ動向の「綱引き」で決まります。
株式市場への波及効果
利下げは株式市場にさまざまな経路でプラス効果を与えます。
- 資金調達コストの低下
企業の借入金利が下がり、設備投資や事業拡大がしやすくなる。 - 消費者ローン需要の増加
自動車ローンや住宅ローンが組みやすくなり、消費刺激につながる。特に自動車関連株にとっては二重の追い風。 - 株式市場への資金流入
債券の利回り低下が株式投資を魅力的にし、国内外の資金流入を促す。
利下げが実施されれば、直近の減税効果と相まって、株価上昇をさらに押し上げる可能性があります。
海外投資家の視点
海外投資家にとって、金融政策は資金フローを左右する大きな要因です。これまでインド市場からは270億ドルもの資金が流出しましたが、利下げと減税が重なれば「政策が市場を下支えしている」との安心感が広がり、資金回帰の動きが加速する可能性があります。
特に米国との関税問題が改善すれば、海外マネーの本格的な回帰と利下げ効果が相乗し、株価に強力な追い風となるでしょう。
長期シナリオとリスク要因
モルガン・スタンレーは「2026年6月にSENSEXが8万9000に到達する可能性は50%、10万に達する確率も30%」と予測しています。こうした強気シナリオを後押しするのは、減税だけでなく金融緩和の持続です。
一方で、注意すべきリスクもあります。
- 原油価格の上昇 → インフレ再燃
- 米金利の変動 → 新興国からの資金流出
- 貿易摩擦の激化 → 景気下押し
利下げは市場に好感されやすいですが、その持続性は外部環境に大きく左右されるのです。
おわりに
インド準備銀行による利下げ期待は、株式市場にとって大きな支えとなっています。減税によって消費が押し上げられる中、利下げが実現すれば企業と消費者の双方に追い風が吹き、株価上昇のシナリオがさらに現実味を帯びるでしょう。
ただし、インド株の本格的な復調には、金融政策に加え、米国との関税交渉の進展という外部要因も欠かせません。今後のRBIの判断が、インド株の未来を左右する最大の焦点のひとつになると言えます。
👉 本稿は、日本経済新聞(2025年9月23日朝刊)記事「インド株復調の兆し 減税好感、2カ月ぶり高値」を参考に執筆しました。
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。
