2026年に入り、円安と長期金利の上昇が同時進行しています。
円安は輸出企業に有利、金利上昇は正常化への一歩といった見方もありますが、日本経済全体にとって本当にプラスなのでしょうか。
日本経済新聞が実施した「エコノミクスパネル」では、学者の過半数が「円安・金利上昇は日本経済にマイナス」と回答しました。本稿では、同調査で示された論点を整理しながら、家計・企業・財政という三つの視点から、日本経済が直面する構造的な課題を考えてみます。
円安がもたらす生活水準の低下
今回の調査で特に多かったのが、「円安は物価高を通じて国民の生活水準を下げる」という指摘です。
エネルギーや食料、原材料の多くを輸入に依存する日本では、円安は輸入物価の上昇に直結します。
問題は、輸出価格が同じペースで上がらない場合です。
輸入価格だけが上昇すると、貿易で稼ぐ力、いわゆる交易条件が悪化し、国全体としては「より多く働いても豊かになれない」状態に陥ります。
これは家計の実感とも一致しており、実質賃金が伸び悩む一因にもなっています。
円安は本当に「実力」を反映しているのか
為替水準については、「現在の円相場は日本の実力を正しく反映していない」との見方も目立ちました。
購買力平価で見れば、1ドル=90~100円程度が妥当とされる中、150円前後の水準は過度な円安と評価されています。
背景にあるのは、生産性の低迷や産業の海外移転です。
国内で付加価値を生みにくくなった結果、均衡実質為替レート自体が円安方向にシフトしているという指摘は、日本経済の構造問題を突いています。
円安が招く長期的な悪循環
短期的な輸出増とは裏腹に、円安が長期的な競争力低下につながる可能性も示されています。
とりわけ深刻なのが、人材の海外流出です。
円安が続けば、同じ能力でも海外で働いた方が高い報酬を得やすくなります。
結果として、高度人材が国内にとどまりにくくなり、イノベーションが生まれにくい環境が固定化される恐れがあります。
金利上昇が企業投資を冷やす懸念
一方、長期金利の上昇についても、過半数がマイナス評価でした。
金利上昇は国債の利払い費を増やし、財政を圧迫します。それだけでなく、企業の資金調達コストを引き上げ、設備投資を抑制する要因になります。
金利は「最低限確保すべき投資収益率」の目安でもあります。
成長見通しが不透明な中で金利だけが先に上昇すれば、企業はリスクを取らず、投資を控える判断をしがちになります。
金利上昇の「プラス面」とその条件
もっとも、金利上昇を前向きに評価する意見もあります。
長年、日銀の国債買い入れで抑え込まれてきた金利が、市場の力で決まるようになること自体は健全だという考え方です。
ただし、その前提は「経済成長への信認が伴うこと」です。
成長期待のない金利上昇は、正常化ではなく負担増として作用してしまいます。
結論
円安と金利上昇は、それ自体が善でも悪でもありません。
問題は、日本経済の基礎体力が弱い状態で起きている点にあります。
生産性が伸びず、賃金も上がらない中での円安は、生活水準を下げる方向に働きやすく、
成長戦略が見えない中での金利上昇は、企業投資を萎縮させかねません。
本当に必要なのは、為替や金利の水準論ではなく、
「円安でも金利上昇でも耐えられる経済構造」をどう作るかという視点です。
人への投資、生産性向上、持続可能な財政運営。
これらが伴わない限り、円安と金利上昇は「追い風」ではなく、「危うさ」として映り続けることになるでしょう。
参考
・日本経済新聞「日経エコノミクスパネル 円安・金利上昇 危うさ」(2026年1月30日朝刊)
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。

