円安が進み、政府・日銀による対応が注目されています。
今回の焦点は、為替介入よりも日銀の利上げが先行する可能性が高まっていることです。
ただ、金利の引き上げは為替を安定させる一方で、家計や企業の資金繰りに新たな負担をもたらす可能性があります。
「円安対策」と「金利上昇リスク」は、表裏一体の課題として捉える必要がある時期に来ています。
1. 円安が家計に与える影響
円安が進むと、まず打撃を受けるのが輸入物価です。
食料品、エネルギー、日用品など、海外からの輸入依存度が高い品目の価格上昇につながります。
実際、円相場が1ドル=150円を超えると、ガソリンや電気・ガス料金の上昇圧力が強まり、可処分所得を圧迫します。
高市政権が物価高対策を最優先課題としているのはこのためです。
一方、日銀が利上げに踏み切れば、円安の抑制効果が期待できる半面、住宅ローンや借入金の金利上昇が家計の重荷となります。
特に変動金利型ローンを利用している世帯では、金利上昇により返済額が上がり、月々の家計を直撃するリスクがあります。
「円安対策としての利上げ」は、家計にとって両刃の剣といえます。
2. 企業活動への影響
企業にとっても円安と金利上昇は相反する影響を及ぼします。
円安は輸出企業にとっては追い風ですが、中小企業や内需型産業にとってはコスト高要因です。
原材料価格の上昇や、仕入先との価格交渉の難航が収益を圧迫しています。
とくに円安が進行する一方で、国内需要が冷え込む場合、価格転嫁が難しくなり、利益率の低下を招きやすい状況です。
金利上昇は、企業の資金調達コストを直接引き上げます。
銀行借入の多い中小企業では、わずかな金利上昇でも返済負担が増え、キャッシュフローの逼迫を招く可能性があります。
さらに、資金調達コスト上昇を嫌気して設備投資を先送りすれば、結果的に国内投資が減り、経済の成長力を損なう懸念もあります。
3. 為替と金利の“同時リスク”への備え
家計・企業ともに共通して重要なのは、「為替と金利の同時変動リスク」への備えです。
たとえば家計では、固定金利型ローンへの切り替えや、エネルギー消費の見直しなど、支出構造の固定化を避ける工夫が求められます。
企業では、為替予約や長期固定金利借入への移行など、リスク分散のための金融戦略が有効です。
日銀が利上げを実施する場合、短期的には市場の混乱も予想されます。
しかし、中長期的には「過度な円安の是正」と「物価安定の信頼回復」が進む可能性があります。
為替と金利がともに安定してこそ、家計も企業も見通しを立てやすくなる――それが本来の政策の狙いです。
結論
円安が続く限り、為替介入だけではなく日銀の利上げが避けられないとの見方が広がっています。
その一方で、利上げが家計や企業にとって「新たな負担」となるのも事実です。
為替安定と金利上昇のバランスをどう取るかは、高市政権と日銀の最重要課題です。
私たちも「円安対策=生活コスト上昇」「利上げ=返済負担増」という構図を正しく理解し、
それぞれの立場で備えることが求められています。
出典
- 日本経済新聞「〈ポジション〉『利上げ→為替介入』の順か」(2025年11月12日付)
- 第一生命経済研究所・藤代宏一氏コメント
- JPモルガン・チェース銀行・棚瀬順哉氏リポート
- 米財務長官ベッセント氏発言(2025年10月下旬)
- 総務省「消費者物価指数」・日本銀行「マネタリーベース統計」より作成
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。

