円安と海外投資 ― 家計が持つべき外貨の割合とは?

FP

円安は一時的か、それとも「新しい常識」か?

2025年10月、為替市場では1ドル=152円台と、
約35年ぶりの円安水準が続いています。

高市政権の経済政策や財政拡張への期待、
そして米国との金利差――。
さまざまな要因が重なり、
「円安は一時的ではなく構造的」との見方が強まっています。

一方で、多くの家庭は依然として資産のほとんどを円で保有しています。
しかし、この円安局面をきっかけに、
「外貨を持たないリスク」を見直すべき時期に来ているかもしれません。


1. 円安が家計に与える3つの影響

円安とは「円の価値が下がる」ということ。
つまり、同じ1万円でも海外から見れば“価値が小さくなる”状態です。
その結果、家計には次のような影響が及びます。

(1)物価上昇 ― 輸入品が高くなる

食料品・エネルギー・日用品など、
日本が輸入に頼る分野では価格上昇が続きます。

(2)海外旅行・留学費用の上昇

以前よりもドルやユーロを買うコストが高くなりました。
教育資金や旅行資金を外貨で積み立てておく意義が高まります。

(3)海外資産の円換算額が増える

逆に、ドル建て・外貨建て資産を持つ人には追い風です。
為替差益が発生し、円ベースの資産額が増えることもあります。


2. 外貨を持つべき理由 ― 「リスク分散」と「購買力維持」

円安の最大のリスクは、「円だけに頼る家計構造」です。
物価が上がっても、円預金の価値は増えません。

そこで必要なのが、外貨による分散投資
目的は「為替差益」ではなく、
自分と家族の購買力を守ることです。

● 為替リスクではなく「為替保険」と考える

ドルやユーロ資産を持つことは、
リスクを取るというより、
「日本円の価値が下がったときの備え」として機能します。


3. 家計が考えるべき「外貨の比率」

では、どのくらい外貨を持つのが理想でしょうか?
答えは家庭の年齢・支出構造・投資経験によって異なりますが、
一般的な目安は以下のとおりです。

タイプ外貨資産比率(目安)主な目的
若年層(20〜40代)20〜30%長期運用・資産形成(NISA・投資信託など)
中堅層(40〜60代)10〜20%老後の購買力維持・海外ETFなど
シニア層(60代〜)5〜10%インフレ・円安リスクへの保険的分散

大切なのは「一気に増やさない」こと。
円安が進むときほど、少しずつ・定期的に外貨資産を積み上げるのが現実的です。


4. 外貨を持つ“3つの方法”

(1)外貨建て投資信託・ETF

最も簡単なのは、新NISAの成長投資枠を使って
S&P500や全世界株インデックスに投資する方法。
自動的に外貨分散されるため、為替リスクも吸収しやすい構造です。

(2)外貨預金・外貨MMF

短期的に外貨を保有したい人向け。
為替手数料がかかるため、
“貯金感覚”で長く持つより、流動性目的での活用が向いています。

(3)海外債券・金(ゴールド)

米ドル建て債券や金ETFは、
円安・インフレ局面での防衛資産として有効です。
ただし、リスクとコストをよく確認して選びましょう。


5. 「為替を読もう」とせず、「仕組みを作る」

為替レートを予測するのはプロでも難しい。
大事なのは「円安・円高を読む」ことではなく、
どんな為替水準でも対応できる“仕組み”を作ることです。

  • 毎月一定額を外貨資産に回す
  • 海外ETFや全世界株をコアにする
  • 外貨資産の利益を生活費には使わず再投資する

こうした仕組みが、将来の生活防衛になります。


まとめ ― 「円だけの家計」から一歩外へ

かつては「円高=安心」「円預金=安全」という時代でした。
しかし今は、円安・インフレが当たり前の時代です。

円を守るために、円だけを持たない。

それがこれからの家計防衛の基本です。

外貨を持つことは、投機ではなく生活のリスク管理
5〜30%程度でも、外貨建ての資産を持つことで、
物価や為替の変動に強い家計に変わっていきます。


出典:2025年10月22日 日本経済新聞朝刊
「新政権発足、市場の見方 経済政策実現で株価に上値余地」


という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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