円安とインフレを「ヘッジ」するという考え方― 保険にたとえると見えてくる資産運用の知恵

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「ヘッジ」という言葉、金融ニュースなどでよく耳にしますが、実際にはどんな意味なのでしょうか。
少し難しく聞こえますが、保険の仕組みにたとえると、ぐっとイメージがつかみやすくなります。


保険とヘッジの共通点

たとえば自動車保険。毎月一定の保険料を支払い、万が一事故が起きたときには保険金で損失を補う仕組みです。
もちろん、事故に遭わなければ保険金はもらえません。掛け捨てになってしまいますが、それは「安心料」として納得できるものです。

金融の世界で言う「ヘッジ」も、まさにこれと似ています。
将来の不測のリスクに備えて、あらかじめ“保険”をかけておくという考え方です。


円安でモノの値段が上がる時、どうヘッジするか

いま、日本では円安によって輸入物価が上がり、物価全体も上昇する傾向があります。
つまり、海外からの仕入れコストが上がるタイプのインフレです。

こうした「円安型インフレ」に対してヘッジを考えるなら、上がっている資産――つまりドル資産を持つことが一つの方法になります。
たとえば、米国の長期国債を保有しておくと、為替の円安によって資産の評価額が上がるうえ、利息も得られます。


ドル資産の効果を数字で見てみよう

仮に300万円を米国の長期国債で運用し、年利4.5%(執筆時点)とすると、
税引き後でおよそ年間10.8万円の利息収入が得られます。

一方、自分の年間支出が400万円だとして、物価が3%上がると、インフレによる「負担増(インフレ・コスト)」は年間12万円になります。
つまり、このドル運用の利息で約9割のインフレ影響をカバーできる計算になります。


為替リスクと「痛み分け」の仕組み

もちろん、ドル資産には為替変動のリスクがあります。
円高になれば、ドル資産の評価額は下がるからです。

ただし、円高のときは輸入物価が下がり、インフレ圧力も弱まります。
つまり、ドル資産で含み損を抱えても、生活のインフレ・コストは軽くなる――ここで「痛み分け(リバランス)」が働くのです。

逆に、円安が進めばドル資産の含み益が出ます。
このとき輸入物価が上がっても、ドル建て資産が“緩衝材”になってくれる。
これが、ヘッジの本質です。


リスクを恐れすぎず、仕組みを理解しておく

外貨資産を持つことは、インフレ・コストを和らげる「リスクヘッジ」の一つの手段です。
確かに為替の変動で一喜一憂することもありますが、
それは“運用リスク”であると同時に、“生活防衛の保険”でもあります。

ヘッジとは、「損をしないための魔法」ではなく、
「痛みを分け合いながら、生活の安定を守る知恵」と言えるでしょう。


まとめ

  • ヘッジは「金融の保険」。不測の損失に備える考え方。
  • 円安によるインフレに対しては、ドル資産を持つことでリスクを軽減できる。
  • 為替変動のリスクはあるが、インフレ・コストとのバランスで痛み分けが起きる。
  • 外貨運用は「儲け」だけでなく、「守り」の効果も持つ。

インフレの時代、リスクを避けるより「上手に付き合う」。
そんな発想こそ、これからの資産運用の基本になるかもしれません。


出典:日本FP協会「トレンドウォッチ」
https://fpj.members.jafp.or.jp/column/trendwatch/2345)


という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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