■「競争社会」の終わりと、“つながり”の再評価
これまでの日本社会は、「競争」が前提でした。
企業はライバルに勝つため、個人は評価を上げるために働く――。
その結果、確かに経済は成長しましたが、同時に「疲弊」も生みました。
成長のための競争が、幸福のための協働へ。
少子高齢化・人口減少が進む中、
もはや「勝ち負け」ではなく、「つながりながら生きる力」こそが経済の基盤になります。
■「共創経済」とは何か
共創経済(Co-Creation Economy)とは、
個人・企業・地域が「利害」ではなく「目的」を共有し、
一緒に価値を生み出す経済のことです。
🔹 旧来の資本主義との違い
| 比較項目 | 競争経済(旧モデル) | 共創経済(新モデル) |
|---|---|---|
| 目的 | 利益の最大化 | 幸福と持続性の最大化 |
| 手段 | 労働力・資本 | 信頼・共感・知識 |
| 成功の指標 | 売上・シェア | 共感・循環・社会的インパクト |
| 関係性 | 対立・分断 | 協働・共有・共感 |
共創経済では、「お金の取引」よりも「価値の共有」が重視されます。
そこに生まれるのは、“個の孤立”ではなく“共の創造”です。
■地域コミュニティ資本:新しい「富のかたち」
地域には、目に見えない資本がたくさんあります。
それが「地域コミュニティ資本(Community Capital)」です。
- 人の資本:住民の知識・技術・経験
- 関係資本:人と人の信頼・つながり
- 自然資本:土地・水・森林などの環境
- 文化資本:伝統・祭り・郷土の誇り
この4つを活かすことで、地域は“お金がなくても回る経済”をつくることができます。
「お金が減っても、人のつながりが増える」社会。
それが、2040年代の日本が目指す“地域自立型の豊かさ”です。
■実践が進む「共創型の地域経済」
全国にはすでに、「共創経済」を実現している地域が現れています。
🌿 事例1:徳島県神山町 ― 移住とITで生まれた“共創のまち”
廃校を活用してカフェやコワーキングを整備し、
IT企業やクリエイターが移住。
地元住民と新住民が協働して地域課題をビジネス化しました。
→ まち全体が“学びと挑戦の場”に。
🌾 事例2:北海道下川町 ― 林業とエネルギーの循環
木材を地域で加工し、再エネと結びつけた「森林経済圏」を構築。
行政・企業・住民が一体となり、地域内循環の共創モデルを実現。
🌸 事例3:長野県飯山市 ― 地域通貨で支え合う共助圏
「iiyamaコイン」を導入し、地元店舗・住民・行政が連携。
ポイントが地域に還元され、買い物・寄付・福祉支援が一体化。
これらはすべて、地域の“信頼”が通貨の代わりになるモデルです。
■「共感資本」が新しい投資を生む
投資の世界でも、“お金を増やす”から“共感で支える”へ。
- ソーシャルインパクト投資(社会的リターン重視)
- クラウドファンディング(共感で集まる資金)
- 地域ファンド(地元の課題に地元が投資)
これらはすべて、「共感資本主義」と呼ばれる新潮流です。
投資の指標が“リターン率”ではなく、
「どれだけ社会を良くしたか」。
人の善意と共感が経済を動かす――
これこそが、共創経済の最大のエンジンです。
■FP・税理士の視点:共創経済を「制度」で支える
共創経済が広がるほど、求められるのは「信頼を制度に変える力」です。
そこで重要な役割を果たすのが、FP・税理士・専門職の存在です。
- 地域通貨・クラファンの税務整備
- 社会的企業・協同組合の財務支援
- 共助ネットワークの会計透明化
- 投資型ふるさと納税・地域ファンド設計
「共創を、数字で支える。」
人と人のつながりが価値を持つ時代に、
“信頼の見える化”を担うのが専門職の使命です。
■まとめ:「つながり」が資本になる社会へ
これからの豊かさは、GDPでは測れません。
それは「人と人がどれだけ支え合えているか」で決まります。
経済の成長ではなく、関係の成長。
所得の増加ではなく、信頼の増加。
共創経済は、「自分の成功」と「誰かの幸せ」が矛盾しない社会をつくります。
そしてそれは、地域という小さな単位から始まる未来のモデルです。
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。

