共創社会を支える税と社会保障の再構築― 「負担」から「参加」へ。100年時代の新しい支え合いのかたち

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■“支える人”と“支えられる人”の境界が消える時代へ

かつての社会保障は、
「現役世代が高齢世代を支える」仕組みとして機能してきました。
年金・医療・介護・雇用保険――いずれも世代間の“垂直的な支え合い”が前提です。

しかし、人生100年時代ではその前提が崩れつつあります。
75歳を超えても働く人が増え、
20代でも副業やフリーランスで納税・社会保険料を負担する。
「誰が支えるか」「いつ支えるか」の線引きが、もはや時代に合わなくなっています。

今、求められているのは――

「支える」から「共に参加する」社会保障への転換。

つまり、“税と社会保障の共創モデル”への進化です。


■現行制度のひずみ:「縦の支え合い」モデルの限界

現在の税・社会保障制度には、3つの構造的ギャップがあります。

① 年齢ベースの負担区分

医療・介護保険は年齢で区切られていますが、
実際の負担能力は「収入」「資産」「就労状況」に左右されます。
結果として、働く高齢者が現役世代並みに負担する一方で、
所得の少ない若年層の可処分所得が圧迫されています。

② 給付と税負担の分断

社会保険料は“保険”として徴収されますが、
実質的には税と同様の性格を持っています。
それにもかかわらず、税制と社会保険制度が別々に運用されており、
「自分の負担がどの給付につながるのか」が見えづらい構造です。

③ 世代間の不公平感

“現役→高齢者”という単線構造では、人口減少に伴い若い世代の負担が急増します。
この構造を放置すれば、社会全体の信頼が揺らぐことになります。


■これからの方向性:「水平的支え合い」への再構築

これからの社会保障は、年齢や所属ではなく、
「活動性」と「所得能力」に応じて支え合う」仕組みへ転換していく必要があります。

具体的な方向性を3つ挙げます。

新モデル概要狙い
① 給付付き税額控除(リファンド税制)所得の低い層に現金給付を行う税制。就労インセンティブを維持しつつ再分配。低所得層支援と消費喚起の両立
② 働く年金(アクティブ・ペンション)年金受給を働く人にも柔軟に支給し、納税を促進。「受け取りながら支える」構造へ
③ 生涯社会保険(ライフサイクル保険)年齢に関係なく一定の保険料を支払い、加入・給付を一本化。年齢基準から活動基準への転換

これらはすべて、「支え合いの水平化」=共創社会への基盤づくりです。


■税制面での“共創”設計:働く・学ぶ・支えるを一体に

税制の役割も、「財源確保」から「社会参画の促進」へと変わります。

たとえば次のような発想が求められます。

  • リスキリング・副業支援を目的とした人的資本投資減税
  • iDeCo・NISAを「生涯資産形成口座」として一本化
  • 子育て・介護支援を「社会貢献控除」として税制化
  • 環境・地域貢献投資への社会連帯税制(ソーシャル・タックス)

つまり、税金を“社会との接点”として再定義するのです。
納税は単なる義務ではなく、
「社会に関わる一つの行動」としてデザインし直す必要があります。


■企業の役割:「共創経営」が社会保障を支える

税と社会保障の再構築には、企業も重要な担い手になります。

出向起業・副業・リスキリング――これらはもはや「福利厚生」ではなく、
社会保障の延長線上にある企業の投資です。

企業が「人を育てる」ことは、同時に「社会を支える」こと。
働く人が長く活躍できれば、税収・消費・地域貢献のすべてが循環します。

この考え方が、まさに「共創経営」。
企業・個人・政府が“支え合う経済圏”を形成することが、
次世代の社会保障の姿です。


■FP・税理士の視点:数字の裏に“人の物語”を見立てる時代

税理士やFPが果たす役割も変化しています。
もはや「税務処理」や「節税対策」だけでは、社会の課題に応えられません。

私たちの仕事は、

数字の裏にある“生き方の設計”を読み解くこと。

たとえば――

  • 給付付き税額控除の活用を通じて低所得層の再チャレンジを支援する
  • 年金・副業・投資の収入を一体で見て、働きながら納税を最適化する
  • 高齢者の働き方と社会保険負担を両立させる設計を示す

税務の現場が「個人の共創支援の現場」へと変わりつつあるのです。


■まとめ:支える人が、支えられる人にもなる社会へ

これからの社会は、
「誰かを支える人」も、
「いつか支えられる人」も、
同じテーブルにつく社会になる。

税と社会保障は、そのための“共創インフラ”です。

納税は、社会への参加。
学びは、将来への投資。
支え合いは、共に生きる仕組み。

こうした価値観を支える制度を築くことこそ、
人生100年時代の「税と福祉の再構築」なのです。


出典:2025年10月6日 日本経済新聞 朝刊
「『出向起業』で事業創出 富士通・NTTドコモなど制度整備進む」ほか関連報道をもとに構成


という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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