公益信託と公益法人の税務上の取扱い比較――寄附・譲渡所得・実務対応の違いを整理する

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公益目的で資産を拠出する手段としては、従来から公益法人への寄附が一般的でした。令和8年4月からは、新たな公益信託制度の開始により、公益信託も同様の選択肢として位置付けられることになります。

もっとも、制度の趣旨が近いからといって、税務上の取扱いがすべて同じというわけではありません。寄附金控除、譲渡所得税の非課税特例、承認手続など、実務上の判断に影響する違いも存在します。

本稿では、公益信託と公益法人について、税務上の取扱いを中心に比較し、それぞれの制度を選択する際の視点を整理します。

制度上の位置付けの違い

公益法人は、公益社団法人や公益財団法人として法人格を有し、公益認定を受けた組織です。一方、公益信託は法人ではなく、信託契約を基礎とする制度であり、公益目的のために信託財産が独立して管理されます。

税務上は、これまで公益法人が公益活動の中心的な担い手として明確に位置付けられてきましたが、令和8年4月以降は、公益信託の受託者も一定の場面で公益法人等に含まれることになります。この点が、今回の税制見直しの前提となっています。

寄附に係る所得税の取扱い

公益法人に対する寄附については、一定の要件を満たす場合、寄附金控除の対象となります。個人の場合は所得控除または税額控除の選択が可能であり、法人の場合も損金算入の特例が設けられています。

公益信託に対する寄附についても、制度上は公益法人への寄附と同様の方向で整理が進められていますが、すべての公益信託が自動的に同一の扱いとなるわけではありません。
公益信託の内容や受託者の位置付けにより、適用関係を慎重に確認する必要があります。

譲渡所得税等の非課税特例の比較

土地や有価証券などの資産を寄附する場合、最大の論点となるのが譲渡所得税等の取扱いです。

公益法人に対して資産を寄附した場合には、公益の増進に著しく寄与するものとして非課税承認を受けることで、譲渡所得税等が非課税となる特例があります。

令和8年4月以降は、この非課税特例の対象となる公益法人等の範囲に、公益信託の受託者が追加されます。
これにより、公益信託への資産拠出であっても、一般特例または承認特例の要件を満たし、非課税承認を受けた場合には、譲渡所得税等が非課税となる可能性が生じます。

ただし、いずれの場合も自動的に非課税となるわけではなく、事前の承認申請が必要である点は共通しています。

承認手続と実務負担の違い

公益法人への寄附に係る非課税特例では、寄附の内容や公益性について個別に確認が行われます。承認申請書の作成や添付書類の準備は、一定の実務負担を伴います。

公益信託の場合も同様に、非課税承認を受けるための手続が必要ですが、信託の設計や関係者の構成が承認要件に直結しやすい点が特徴です。
特に承認特例の適用を検討する場合には、寄附者と受託者との人的関係について、事前に慎重な確認が求められます。

相続税・贈与税との関係

公益法人に対する寄附は、一定の要件のもとで相続税や贈与税の非課税措置が認められています。
公益信託についても、公益目的での財産拠出であることを前提に、同様の考え方が適用される場面が想定されますが、今後の通達や実務運用の整理が重要となります。

特に、生前対策として公益信託を活用する場合には、所得税だけでなく、相続税・贈与税まで含めた総合的な検討が欠かせません。

制度選択の実務的な視点

公益法人は、長期的・継続的な公益活動を組織として行う場合に適しています。一方、公益信託は、特定の目的や期間に限定した公益活動を行いたい場合に柔軟に活用できる制度です。

税務上の取扱いは近づきつつありますが、承認手続や管理体制、実務負担のあり方には違いがあります。
制度の名称や税制優遇だけで判断するのではなく、目的や資産の性質に応じた選択が重要です。

結論

公益信託と公益法人は、いずれも公益目的を実現するための制度ですが、税務上の取扱いには共通点と相違点があります。
令和8年4月以降は、公益信託も譲渡所得税等の非課税特例の対象に含まれることで、制度間の差は縮まりますが、承認要件や実務対応の違いは引き続き意識する必要があります。

公益目的での資産拠出を検討する際には、税制だけでなく、制度の構造や運用面まで含めた比較が欠かせません。

参考

・税のしるべ 2026年1月19日
 公益信託に財産を拠出した場合における譲渡所得税等の非課税の特例のあらまし


という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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