2025年秋、日本の政治が大きく揺れています。
公明党が自民党との連立から離脱することになり、高市早苗総裁が掲げてきた「早期の物価高対策」は、出足からつまずきました。
政権発足を目前に控えたこのタイミングでの連立解消は、今後の政策運営に深い影響を与えそうです。
物価高対策、スタートから遅れる
高市氏は、今月後半の臨時国会で首相に指名された後、
すぐに物価高対策を含む経済政策を閣議で指示する予定でした。
しかし、政権の枠組みが固まらないままでは、指示そのものが後ろ倒しになります。
予定されていた経済対策の柱は次の3つです。
- ガソリン税・軽油引取税の旧暫定税率の廃止
- 自治体が使える重点支援交付金の拡充
- 生活支援を含む家計対策の強化
特に注目されていたのが「ガソリン減税」。
年間1.5兆円の財源をどう確保するかが焦点で、野党との調整が必要でした。
連立の基盤を失った自民党にとって、財源論を巡る議論は一段と厳しくなります。
政策合意のハードル、一気に上昇
連立解消により、国会での議席は自公で過半数を割り込みます。
石破政権時代のように、国民民主党や日本維新の会と個別に合意を取り付ける必要が生じるでしょう。
この構図は、政策を前に進めるための「調整コスト」を高めます。
野党は「賛成の見返り」に自らの政策を主張しやすくなり、
財政拡張(ばらまき)方向へ傾くリスクもあります。
実際、10日の国内債券市場では10年国債の利回りが1.7%台まで上昇。
これは約17年ぶりの水準で、市場が「財政規律の緩み」を警戒しているサインです。
教育・社会保障改革にも暗雲
26年度から始まる予定だった「高校授業料無償化」の制度設計も宙に浮きました。
この政策は、今年2月に自民・公明・維新の3党合意で進めていたもの。
私立高校の所得制限撤廃と支給上限45万7000円への引き上げ、小学校の給食費無償化が柱でした。
法律の裏付けがまだ整っていないため、制度の開始時期にも影響が出かねません。
また、社会保障の見直し――特に高額療養費制度の改正も先送りの懸念があります。
「秋までに方針決定」としていた政府案は、政治の停滞で再び議論が滞りそうです。
経済界からの懸念と求められるリーダーシップ
日本商工会議所の小林健会頭は10日、
「政治空白をできるだけ短くしてもらいたい」と強く訴えました。
物価高、金利上昇、人手不足――経済が不安定な中で、政策停滞は企業活動にも影を落とします。
高市氏が掲げてきたのは「経済で希望を取り戻す政治」。
そのスタートラインに立つ前に、政権の安定性が問われるという皮肉な展開です。
家計と企業に問われる「備え」
政治の不確実性が増すとき、私たちにできるのは“備え”です。
企業はコスト上昇への耐性を、家計は物価と金利の変動リスクを見直す時期にあります。
- 家計では、固定費の見直し・住宅ローンの金利タイプの再確認
- 企業では、エネルギーコスト上昇への備えや内部留保の戦略的活用
経済・政治が不安定な時期ほど、「守り」と「攻め」のバランスを冷静に考えたいですね。
出典:
2025年10月11日 日本経済新聞朝刊
「政策の停滞長引く」
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO91889880R11C25A0EA1000/?n_cid=dsapp_share_ios
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。

