政府は2026年1月、外国人政策の基本方針の見直し案として、公営住宅やUR賃貸住宅への入居時に、外国人の国籍や在留資格の把握を事業者に求める方針を示しました。土地取得規制の具体化は見送られる一方、居住分野では管理の厳格化に踏み出す形です。
本稿では、この方針が示された背景と狙い、実務面で想定される影響、そして生活者の視点から見た論点を整理します。
政府方針の概要
今回の基本方針案では、公営住宅および都市再生機構が供給する賃貸住宅において、外国人入居者の国籍や在留資格の確認を事業者に求めるとされています。
あくまで「把握」が主眼であり、現時点では入居制限や排除を目的とするものではありません。政策文書では、特定地域に外国人世帯が集中し、学校現場で外国籍児童・生徒が急増することによる教育負担の増大などが理由として挙げられています。
土地取得規制が見送られた意味
自民党と日本維新の会の連立合意では、外国人による土地取得規制が明記されていました。しかし政府は、国際法や投資協定との整合性を理由に、具体策の打ち出しを先送りしました。
一方で、公営住宅は「公的資源」であり、利用実態を把握することの正当性が比較的認められやすい分野です。今回の方針は、規制が難しい領域ではなく、管理強化が可能な領域から手を付けたものと位置づけられます。
実務面で想定される変化
事業者側では、入居申込時に国籍や在留資格を確認・記録する事務が増えることになります。もっとも、在留カード等の確認は民間賃貸でも一般化しており、手続き自体が大きな負担になるとは限りません。
一方で重要なのは、取得した情報の利用目的です。統計的把握や地域政策への反映にとどまるのか、それとも将来的に入居要件や配分ルールに影響するのかによって、制度の意味合いは大きく変わります。
教育・地域政策との接続
政府が理由として挙げた学校現場の負荷は、外国人政策というよりも、教育行政・自治体政策の課題です。日本語教育支援員の配置や学級運営の工夫など、本来は教育側の対応が求められる場面も少なくありません。
国籍把握は実態把握の第一歩にはなりますが、それ自体が問題解決策になるわけではない点には注意が必要です。
排除ではなく「見える化」の段階
今回の方針は、外国人の居住を制限する政策ではなく、現状を正確に把握するための「見える化」に近いものです。ただし、見える化は常に次の政策判断への前提になります。
生活者の立場からは、国籍情報がどのように扱われ、どのような政策につながるのかを丁寧に監視していく必要があります。
結論
公営住宅入居時の国籍把握は、外国人政策の中でも比較的穏健な管理強化策といえます。土地取得規制という難題を先送りする一方で、居住分野から実態把握を進める政府の現実的な選択でもあります。
重要なのは、この施策が排除や線引きに向かうのか、それとも共生社会の基礎データとして活用されるのかです。今後の運用と、教育・地域政策との連動が問われる局面に入ったといえるでしょう。
参考
・日本経済新聞 2026年1月22日朝刊
公営入居、事業者に国籍把握求める 政府、外国人政策に盛る
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。
