健康保険料は、会社員やその家族にとって毎月確実に負担となる固定費です。
特に中小企業の従業員が多く加入する協会けんぽでは、都道府県ごとに保険料率が異なるため、「住んでいる場所によって負担が違う」という問題が以前から指摘されてきました。
2026年度の協会けんぽの都道府県別保険料率が決定しましたが、地域差は前年から縮まらず、依然として大きな開きが残っています。
この記事では、今回の料率決定の内容を整理したうえで、なぜ地域差が解消されにくいのか、そして今後どのような視点が求められるのかを考えていきます。
2026年度の協会けんぽ料率の概要
2026年度の協会けんぽの健康保険料率は、全国平均で9.9%となり、前年度から0.1%引き下げられました。
これは、旧政府管掌健康保険時代の1992年度以来、34年ぶりの全国平均の引き下げとなります。
しかし、都道府県別に見ると状況は大きく異なります。
最高は佐賀県の10.55%、最低は新潟県の9.21%で、その差は1.34%と前年度と同水準です。
平均が下がった一方で、地域間の格差は依然として解消されていません。
26年度は40都道府県で料率が引き下げられましたが、引き下げ幅には差があり、青森・秋田・山形・栃木・神奈川・島根・沖縄の7県は据え置きとなりました。
都道府県別料率はどのように決まるのか
協会けんぽの都道府県別料率は、全国平均の保険料率を基準に、各地域の1人当たり医療費などを反映して決められます。
医療費水準が高い地域ほど料率は高くなり、低い地域ほど料率は抑えられる仕組みです。
このため、高齢化が進んでいる地域や、医療機関の利用頻度が高い地域では、どうしても保険料率が高くなりがちです。
佐賀県が全国で最も高い料率となっている背景にも、こうした構造的な要因があります。
一方、新潟県は医療費水準が比較的低く、結果として全国で最も低い料率となっています。
「特例措置」による据え置きの意味
2026年度には、本来であれば料率が上昇するはずだった地域について、変動を複数年度でならす特例措置が取られました。
島根県では、本来0.14%上昇して10%を超える見込みだったところ、前年度と同じ9.94%に据え置かれています。
協会けんぽは、「全国平均が下がる中で、実際の料率が上昇すると加入者の納得感が得られない」と説明しています。
確かに、平均が下がったという報道の一方で、自分の地域の保険料が上がれば、違和感を覚える人は少なくありません。
ただし、この措置は負担を先送りしているに過ぎないという指摘もあります。
医療費構造が変わらない限り、いずれ調整が必要になる可能性は高いと言えるでしょう。
医療保険料だけでは語れない「実質負担」
今回の料率決定で見落としがちなのが、医療保険料以外の上乗せ負担です。
2026年度には、介護保険料率が0.03%引き上げられ、1.62%となります。
さらに、少子化対策の財源として、新たな支援金が保険料に0.23%分上乗せされることになります。
これらは医療保険料とは別枠ですが、実際には同じ健康保険料として徴収されるため、加入者の負担感は増します。
医療の保険料率が下がっても、その効果の多くはこれらの上乗せで相殺される構造です。
地域差が縮まらない本当の理由
健康保険料率の地域差がなかなか縮まらない背景には、単なる制度設計の問題だけでなく、医療提供体制や人口構造の違いがあります。
高齢化率、医療機関の配置、受診行動の違いなどは短期間で是正できるものではありません。
また、地域の医療費を抑えることは、時に医療アクセスの制限やサービス水準の低下と表裏一体になります。
そのため、「地域差をなくす」という単純な目標設定だけでは、現実的な解決策を見いだすことは難しいと言えます。
加入者・事業主が持つべき視点
今回の料率決定は、「平均が下がったかどうか」だけを見ると評価しやすい内容です。
しかし、実際には地域差は維持され、介護や少子化対策の負担が積み重なる構造は変わっていません。
加入者としては、保険料率の数字だけで一喜一憂するのではなく、
・なぜ自分の地域がその水準なのか
・今後どのような要因で上昇・下降し得るのか
を冷静に理解することが重要です。
事業主にとっても、社会保険料は人件費に直結するコストです。
短期的な料率変動だけでなく、中長期的な負担構造を踏まえた経営判断が求められます。
結論
2026年度の協会けんぽの保険料率は、全国平均では引き下げとなりましたが、地域差は依然として大きく残りました。
さらに、介護保険や少子化対策の上乗せにより、実質的な負担感は必ずしも軽くなっていません。
健康保険料は、社会保障制度全体の縮図とも言える存在です。
数字の変化だけでなく、その背景にある構造を理解することが、今後ますます重要になっていくでしょう。
参考
・日本経済新聞「健保料率の地域差縮まらず 佐賀最高10.55%、新潟最低9.21%」(2026年1月30日)
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。

