売上目標が達成できないとき、最も手っ取り早く見える手段が値引きです。
価格を下げれば売れやすくなり、短期間で数量を伸ばすことができます。その結果、月次や四半期の売上目標は「達成」できるかもしれません。
しかし、売上目標を達成しているにもかかわらず、利益が残らない、資金繰りが楽にならないという会社は少なくありません。
この違和感の正体はどこにあるのでしょうか。
本稿では、「売上」と「利益」の関係をあらためて整理し、値引きがもたらす本当の影響について考えてみます。
売上目標と利益目標は、まったく別物
営業現場では、売上高を基準に目標が設定されることが一般的です。
「今月は800万円」「今期は1億円」といった具合に、金額は明確で分かりやすく、進捗管理もしやすいからです。
一方で、会社の目的は売上を増やすことではなく、利益を残すことにあります。
売上が同じでも、粗利や販管費の構造によって、会社の体力は大きく変わります。
極端に言えば、
・売上1億円で利益100万円の会社
・売上5,000万円で利益500万円の会社
では、後者のほうが経営としては健全です。
ところが営業の現場に立つと、この視点は後回しになりがちです。
目の前の目標を達成するために、値引きという「確実に効く手段」に頼りたくなるのは自然なこととも言えます。
同じ売上でも、結果がまったく違う理由
値引きの問題点は、粗利率が下がることだけではありません。
販売数量を増やすことで、次のようなコストが連動して増えていきます。
・配送や梱包などの物流コスト
・請求書発行、入金管理、営業事務の手間
・在庫を多く抱えることによる管理コスト
・クレーム対応やアフターフォローの増加
一見すると売上は同じでも、数量が多いビジネスほど、目に見えにくい販管費が膨らみやすくなります。
結果として、利益が残らない、あるいは赤字になるという現象が起こります。
「売れているのに苦しい」という状態は、決して珍しい話ではありません。
値引きが常態化すると何が起きるか
値引きには、もう一つ大きな問題があります。
それは、価格がその会社の「基準」として認識されてしまうことです。
一度下げた価格を元に戻すのは簡単ではありません。
顧客は値引き後の価格を「適正価格」と感じ、定価では買わなくなります。
さらに、
・値引き前提でしか売れない
・利益が出ないため、人や設備に投資できない
・サービス品質が下がる
という悪循環に陥る可能性も高まります。
短期的な売上達成のための値引きが、長期的には競争力を削いでしまうのです。
それでも値引きが必要な場面はある
ここまで読むと、「値引きは絶対にしてはいけない」と感じるかもしれません。
しかし、すべての値引きが悪というわけではありません。
・新規顧客の獲得を目的とした期間限定の施策
・在庫処分や商品入れ替えのための戦略的値引き
・価格以外の条件と組み合わせた提案
このように、目的と期間を明確にした値引きには意味があります。
問題なのは、「売上目標を達成するためだけ」の安易な値引きです。
値引きを行う前に、
・この値引きで、利益はいくら減るのか
・数量増加で、どのコストがどれだけ増えるのか
・値引きをやめた後、価格は戻せるのか
を一度立ち止まって考える必要があります。
価格を守る営業は、創意工夫の積み重ね
価格を維持しながら売るためには、営業側の工夫が欠かせません。
・価格以外の価値をどう伝えるか
・顧客にとっての不安や不満をどう解消するか
・商品やサービスの使い方、成果をどう見せるか
これらは即効性はありませんが、積み重ねることで「値引きしなくても選ばれる理由」になります。
結果として、
・利益が残る
・顧客との関係が安定する
・経営判断の選択肢が広がる
という好循環が生まれます。
結論
値引きをすれば、売上目標は達成しやすくなります。
しかし、それは必ずしも会社の目的である「利益を残す経営」につながるとは限りません。
売上目標と同時に、
・どれだけの利益を残したいのか
・そのために守るべき価格はいくらなのか
を考えることが重要です。
短期の数字に振り回されず、価格を守るための工夫を続けられる会社こそが、長く生き残っていくのだと言えるでしょう。
参考
・「値引きしたら楽勝で売上目標達成や」『企業実務』2026年1月号
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。

