家族に仕事を手伝ってもらっている個人事業主にとって、
「青色事業専従者給与」は、節税策としてよく知られた制度です。
しかし実務では、
- 届出をしているのに否認された
- 金額が高すぎると言われた
- 勤務実態を証明できずトラブルになった
といったケースも少なくありません。
青色事業専従者給与は、
「青色申告だから認められる制度」
ではなく、
所得税法56条という強い原則の例外
として位置づけられています。
第6回では、
青色事業専従者給与がなぜ厳しく扱われるのか、
そして、どこで判断が分かれるのかを整理します。
所得税法56条が定める大原則
まず押さえておくべきなのが、所得税法56条です。
この条文は、次のような考え方を採っています。
生計を一にする配偶者や親族に対して支払った対価は、
原則として、
事業主の必要経費に算入しない。
つまり、
家族に給与や賃料、報酬を支払ったとしても、
原則は「経費にならない」という立場です。
この規定の背景には、
家族間取引を利用した所得分散を防ぐ、
という立法趣旨があります。
青色事業専従者給与は「例外中の例外」
青色事業専従者給与は、
この56条の原則に対する特別な例外です。
一定の要件を満たす場合に限り、
生計を一にする親族への給与であっても、
必要経費として認める、
という仕組みになっています。
したがって、
- 青色申告をしている
- 届出書を提出している
というだけでは、
当然に経費になるわけではありません。
あくまで、
56条の原則を乗り越えるだけの要件を、
一つひとつ満たしているかが問われます。
判断の前提となる三つの要件
青色事業専従者給与が認められるためには、
形式面・実態面の双方で、
次の要件を満たす必要があります。
第一に、
専ら事業に従事していること
です。
臨時的・補助的な手伝いでは足りません。
第二に、
その労務の対価として相当な金額であること
です。
同業他社や地域の相場と比べて、
明らかに過大な金額は認められません。
第三に、
勤務実態を客観的に説明できること
です。
タイムカード、業務日誌、担当業務の内容などが、
重要な判断材料になります。
届出をしていても否認される理由
実務で特に多いのが、
「届出は適正なのに否認された」
というケースです。
この場合、
問題になるのは形式ではなく、
実態 です。
例えば、
- 勤務時間や勤務日数が不明確
- 業務内容が抽象的
- 他の従業員とのバランスを欠く報酬額
といった場合には、
「専従」「相当額」という要件を満たさないとして、
必要経費性が否定されることがあります。
届出は、
あくまでスタートラインにすぎません。
医師の事例に見る判断のポイント
研修資料では、
内科診療所を営む医師が、
配偶者に高額な専従者給与を支払っていた事例が紹介されています。
この事例では、
- 配偶者に資格がある
- 届出金額の範囲内である
といった点は満たしていました。
しかし、
勤務実態を示すタイムカード等の記録がなく、
金額の妥当性を説明できない点が問題になります。
このような場合、
形式要件を満たしていても、
実質要件を欠くとして、
否認リスクが高まります R07-35+
税務署が見ているのは「実際に何をしているか」
青色事業専従者給与の判断で、
税務署が重視しているのは、
- 実際にどの業務を
- どの程度の時間
- どの責任範囲で行っているか
という点です。
「家族だから」「信頼しているから」
という説明は、
税務上の根拠にはなりません。
第三者に説明しても納得できる内容かどうかが、
判断の分かれ目になります。
結論
青色事業専従者給与は、
節税に使える便利な制度である一方、
否認リスクも高い制度です。
その理由は、
所得税法56条という強い原則の上に、
成り立っている例外規定だからです。
- 専ら事業に従事しているか
- 金額は相当か
- 勤務実態を説明できるか
これらを事前に整理し、
記録として残しておくことが、
トラブルを防ぐ最大のポイントになります。
次回は、
本シリーズのまとめとして、
税務署はどこを見ているのか|必要経費否認を避ける実務チェック
をお届けします。
参考
東京税理士会研修資料
全国統一研修会「必要経費と家事関連費の判断基準」「青色事業専従者給与の留意事項」
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。
