必要経費を巡る相談で、最も質問が多いのが次の三つです。
- 自宅兼事務所の家賃や光熱費は、どこまで経費になるのか
- スマートフォン代は、仕事に使っていれば全額経費なのか
- 自家用車を仕事にも使っている場合、どう考えればよいのか
これらはいずれも、
事業と生活が混在する支出
という共通点を持っています。
前回までで整理したとおり、
家事関連費は原則として必要経費に算入できず、
例外として、一定の要件を満たす場合に限り、
業務に対応する部分のみが認められます。
第5回では、この判断枠組みを、
日常的に問題になりやすい支出に当てはめて考えていきます。
自宅兼事務所の基本的な考え方
自宅兼事務所の場合、
家賃、光熱費、減価償却費などは、
典型的な家事関連費に該当します。
したがって、
「仕事をしている場所が自宅である」
という理由だけで、全額を経費にすることはできません。
ここで重要になるのが、
明確区分性 です。
業務に使用している部分を、
合理的かつ客観的に区分できるかどうかが、
判断の分かれ目になります。
面積比による按分と注意点
自宅兼事務所で最も一般的なのが、
使用面積比による按分です。
例えば、
自宅全体の床面積のうち、
30%を業務専用スペースとして使用している場合、
家賃や減価償却費の30%を経費とする、
という考え方です。
ただし、ここで注意すべき点があります。
そのスペースが、
- 業務専用であること
- 家族が自由に出入りしないこと
といった実態が伴っていなければ、
「明確に区分できる」とは評価されにくくなります。
研修資料でも、
業務専用スペースであることを、
写真などの客観資料で説明できるかが、
重要なポイントとして示されています R07-35+
光熱費は「使っている時間」も意識する
電気代や水道代などの光熱費は、
面積比だけでなく、
使用時間の要素も影響します。
例えば、
業務スペースであっても、
実際の稼働時間が限定的であれば、
全面的に業務使用とは言い切れません。
このような場合には、
- 面積比
- 業務時間
を組み合わせて、
より合理的な按分を検討することが望ましいといえます。
重要なのは、
「なぜその割合なのか」を説明できることです。
スマートフォン代の考え方
スマートフォン代も、
事業と私用が混在しやすい支出です。
仕事用と私用で端末を完全に分けている場合は、
業務用端末の通信費は、
原則として必要経費になります。
一方、
一台の端末を仕事と私用で併用している場合は、
家事関連費として扱われ、
按分が必要になります。
この場合、
- 通話履歴
- 利用時間
- 業務アプリの使用状況
などを踏まえ、
業務使用割合を合理的に説明できるかが重要です。
「仕事にも使っている」
という説明だけでは足りません。
自家用車を業務にも使っている場合
自家用車についても、
考え方は同様です。
業務専用車であれば、
維持費や減価償却費は、
原則として必要経費になります。
一方、
私用と業務で併用している場合には、
走行距離や使用日数などに基づいて、
業務使用分を区分する必要があります。
この場合、
運行記録や業務日誌があるかどうかが、
客観性を支える重要な要素になります。
「記録がない」ことのリスク
自宅兼事務所や併用資産について、
実務上、最もリスクが高いのは、
記録が残っていないケース です。
按分割合自体は妥当であっても、
その根拠を示す資料がなければ、
税務上は否認される可能性があります。
領収書があることと、
業務使用実態を説明できることは、
別の問題です。
- 写真
- 業務日誌
- スケジュール
- ログ
こうした補助資料があるかどうかで、
判断は大きく変わります。
結論
自宅兼事務所やスマートフォン、自家用車は、
個人事業主にとって避けて通れないテーマです。
これらの支出について重要なのは、
「どこまでが経費になるか」よりも、
「なぜその範囲が経費になるのか」を
説明できるかどうかです。
- 業務との関係
- 明確な区分
- 客観的な記録
- 社会通念上の妥当性
これらを意識して整理しておくことで、
不要なトラブルを防ぐことができます。
次回は、
家族が関係する支出の中でも特に注意が必要な
青色事業専従者給与
について解説します。
参考
東京税理士会研修資料
全国統一研修会「必要経費と家事関連費の判断基準」「青色事業専従者給与の留意事項」
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。
