価格転嫁できないフリーランスの典型パターン分析――なぜ制度があっても値上げできないのか

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改正下請法やフリーランス新法の施行により、フリーランスを取り巻く制度環境は整いつつあります。しかし現実には、「制度があっても価格転嫁できない」「協議を切り出せない」という声が依然として多く聞かれます。

問題は、制度そのものよりも、価格転嫁ができない構造や行動パターンにあります。本稿では、実務の現場でよく見られる「価格転嫁できないフリーランス」の典型パターンを整理し、なぜ転嫁が進まないのかを分析します。

パターン① 業務内容と報酬の対応関係が曖昧

価格転嫁できないフリーランスに共通するのが、「何に対していくらもらっているのか」が曖昧な取引です。

業務範囲が広がっても報酬が据え置かれたままになりやすく、後から「ここまでは契約外だ」と主張しにくくなります。
業務内容が定義されていない取引では、価格改定の根拠も示しにくく、協議の出発点を作れません。

パターン② 時間単価・原価を把握していない

自分の仕事を「好きだから」「頼まれたから」という理由で引き受けてきたフリーランスほど、時間単価や原価を把握していない傾向があります。

結果として、報酬が下がっていることに後から気づいても、「いくら上げるべきか」を説明できません。
価格転嫁は感覚ではなく計算です。数字を持たない交渉は、制度があっても成立しません。

パターン③ 発注側の事情を先回りしすぎる

「相手も厳しいから」「今は値上げの話をする時期ではない」と、発注側の事情を先回りして考えすぎるケースも典型です。

この姿勢は一見、関係性を重視しているように見えますが、実務上は価格改定の機会を自ら放棄している状態でもあります。
制度は「協議を求める権利」を保障していますが、使わなければ意味を持ちません。

パターン④ 取引先依存度が高すぎる

売上の大半を一社に依存しているフリーランスほど、価格交渉に踏み出しにくくなります。
「切られたら困る」という心理が、協議の申し出そのものを阻みます。

制度上は問題があっても、実務では「次がない」状態が価格転嫁を不可能にします。
これは法律では解消できない、事業構造の問題です。

パターン⑤ 契約更新と価格交渉を同時に考えてしまう

価格転嫁できないケースでは、契約更新と価格改定を同時に持ち出してしまうことが多く見られます。

更新の可否と価格の話題が混在すると、発注側は「条件が合わなければ更新しない」という選択を取りやすくなります。
結果として、交渉が成立する前に取引が終わる可能性が高まります。

パターン⑥ 制度を「盾」として使おうとする

改正下請法やフリーランス新法を、いきなり「法律ではこうなっています」と持ち出すのも、失敗しやすいパターンです。

制度はあくまで後ろ盾であり、最初に前面に出すと、関係性が一気に硬直することがあります。
価格転嫁は交渉であり、通告ではありません。

パターン⑦ 価格転嫁を「値上げ要求」と捉えている

価格転嫁できないフリーランスほど、「値上げ=相手に負担を押し付けること」と考えがちです。

しかし実際には、コスト上昇や業務内容の変化を取引条件に反映する行為です。
この認識のズレがある限り、協議は常に心理的ハードルの高いものになります。

パターン⑧ 協議の記録を残していない

協議を口頭で済ませ、その場の空気で流してしまうケースも多く見られます。
結果として、「協議を求めた事実」も、「断られた経緯」も残りません。

制度を活かすためには、やり取りを客観的に残す視点が不可欠です。記録がない協議は、制度上も実務上も評価されにくくなります。

結論

価格転嫁できない理由の多くは、制度の不足ではなく、取引構造や行動パターンにあります。
改正下請法やフリーランス新法は、協議の土台を整える制度であって、交渉を代行してくれるものではありません。

価格転嫁を実現するためには、
・業務内容と報酬の整理
・原価と時間単価の把握
・取引先依存度の見直し
・協議の切り出し方の工夫
といった、事業者としての基本動作が欠かせません。

制度を知ることと、価格転嫁できることは別問題です。
制度を活かせるフリーランスになることが、結果として価格転嫁への最短ルートになります。

参考

・日本経済新聞「改正下請法きょう施行 政府、価格転嫁の監視強化」(2026年1月1日朝刊)


という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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