住宅確保をどう支えるか 物価・金利上昇時代に問われる「アフォーダビリティー」

FP
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大都市圏を中心に住宅価格の高騰が続いています。新築マンションだけでなく、中古マンションや賃貸住宅においても、家計に占める住居費の負担感は年々強まっています。
住宅価格の上昇や金利の動向が注目されがちですが、本来問われるべきなのは「どれだけの世帯が、どの程度の住宅を現実的に確保できるのか」という視点です。近年、欧米で重視されている「住宅アフォーダビリティー(負担可能性)」という考え方は、日本においても重要性を増しています。

住宅価格ではなく「手が届くか」で見る視点

住宅アフォーダビリティーとは、単に住宅価格の水準を指すものではありません。
賃貸であれば所得に対する家賃負担の割合、持ち家であれば所得と住宅価格、さらには住宅ローン返済額との関係を含めて評価する考え方です。

近年はさらに踏み込み、初めて住宅を取得しようとする世帯が、住宅市場全体のうち「どれくらいの割合の住宅に手が届くのか」を分析する研究も進んでいます。この視点に立つと、住宅価格の上昇や金利の変化が、家計に与える影響がより立体的に見えてきます。

東京23区の子育て世帯に起きていること

東京23区の借家に住む子育て世帯は、全国平均と比べると世帯年収が高い傾向にあります。それでもなお、住宅取得のハードルは決して低くありません。

一定の前提条件のもとで試算すると、低金利が維持され、住宅ローン返済に年収の3割を充てられる場合でも、年収中央値の世帯が取得可能なのは市場全体の約半分程度にとどまります。
さらに、金利が上昇し、物価高によって返済に回せる割合が減少すると、取得可能な住宅の範囲は大きく縮小します。条件が少し変わるだけで、住宅取得が一気に現実的でなくなる世帯が増えることが分かります。

金利と物価がもたらす「見えにくい壁」

住宅ローンは長期間にわたる契約です。そのため、金利のわずかな上昇や、生活費の増加による返済余力の低下が、住宅取得可能額に大きな影響を及ぼします。

とくに、年収が中央値より低い世帯では、金利上昇局面において「ほとんどの住宅に手が届かない」という状況が生じかねません。
これは、住宅価格が上がったから住宅が買えなくなった、という単純な話ではなく、家計全体の余力が削られている結果といえます。

持ち家偏重から「住まいの確保」へ

日本の住宅政策は、これまで持ち家取得の支援に重点が置かれてきました。住宅ローン減税や固定金利型ローンの整備などは、その代表例です。
一方で、賃貸住宅を含めた「手頃な住まいの確保」という視点は、十分とはいえませんでした。

物価や金利が上昇する局面では、すべての世帯が持ち家を取得できる前提そのものが揺らぎます。これからは、持ち家か賃貸かを問わず、安定した住環境を確保できる仕組みが必要です。

アフォーダブル住宅という選択肢

海外では、アフォーダブル住宅の供給が政策として位置付けられています。市場家賃より低い水準で入居できる賃貸住宅や、将来的な購入を見据えた制度設計など、多様な選択肢が用意されています。

日本でも、空き家の活用や中古住宅の流通促進、官民連携による低廉な住宅供給といった取り組みが始まりつつあります。都市部を中心に、子育て世帯や中所得者層が無理のない負担で住まいを確保できる環境整備が求められています。

空き家活用と課税の視点

住宅供給を考えるうえで、空き家の存在は避けて通れません。
海外では、長期間空き家となっている住宅に対して、税負担を重くすることで活用を促す仕組みが導入されています。日本でも、地域の実情に応じた課税や誘導策の検討が今後の課題となるでしょう。

結論

住宅問題は、単なる不動産価格の問題ではありません。
物価や金利、家計構造の変化を踏まえ、「どのように住まいを確保するか」という視点で捉え直す必要があります。
持ち家取得支援とあわせて、アフォーダブルな賃貸住宅の計画的な供給や、空き家の有効活用を進めることで、多様な世帯が安心して暮らせる住宅環境を整えることが、これからの住宅政策に求められているといえるでしょう。


参考

・日本経済新聞「住宅確保をどう支えるか(上) 物価・金利上昇に対応必要」
・総務省統計局「住宅・土地統計調査」
・国土交通省「不動産情報ライブラリ」
・国土交通省「住生活基本計画(全国計画)中間とりまとめ」


という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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