はじめに
住宅ローン控除は、住宅取得時の負担を軽くする制度です。しかし、人生100年時代において、住宅は「一生住み続ける前提」の資産ではなくなりつつあります。
定年後や高齢期を迎えたとき、
・家を売却して住み替える
・賃貸に出して収入を得る
・そのまま住み続ける
という選択肢が現実的に浮上します。
本稿では、住宅ローン控除を使った住宅を前提に、老後の住み替えをどう考えるべきかを整理します。
住宅ローン控除は「老後の選択」を縛らない
まず確認しておきたいのは、住宅ローン控除を利用したこと自体が、老後の住み替えを制限することはないという点です。
控除はあくまで「その年に居住しているかどうか」が要件であり、将来の選択を縛る契約ではありません。
ただし、居住をやめた時点で控除は終了します。
つまり、
・売却
・賃貸への転用
・長期不在
などが生じた場合、その年以降は控除を受けられなくなります。
この「控除がいつ終わるか」をどう受け止めるかが、老後の住み替え判断の出発点になります。
選択肢① 老後に売却する
老後の住み替えとして最も分かりやすいのが「売却」です。
売却のメリット
・まとまった現金を確保できる
・管理や修繕の負担から解放される
・バリアフリー住宅や駅近住宅に住み替えやすい
特に、定年前後で住宅ローン残高が少なくなっている場合、売却代金は老後資金の重要な柱になります。
住宅ローン控除との関係
住宅を売却した年は、住宅ローン控除は使えません。その代わり、一定の要件を満たせば自宅売却時の特別控除を使うことができます。
多くの場合、老後の売却ではこちらの方が影響が大きくなります。
重要なのは、「控除期間を最後まで使い切らなければ損」という発想に縛られすぎないことです。
老後の生活設計に合わない住宅を無理に持ち続ける方が、結果的にリスクになるケースも少なくありません。
選択肢② 老後に賃貸に出す
次に考えられるのが「賃貸への転用」です。
賃貸に出すメリット
・家賃収入を老後の生活費に充てられる
・将来自分や家族が戻る選択肢を残せる
・売却タイミングを柔軟にできる
特に、立地の良い住宅や需要のあるエリアでは、有力な選択肢になります。
住宅ローン控除との関係
住宅を賃貸に出した時点で、その年以降の住宅ローン控除は終了します。
また、家賃収入は不動産所得として課税対象になります。
さらに注意したいのは、
・老朽化による修繕費
・空室リスク
・管理の手間
といった「見えにくい負担」です。
老後に賃貸を選ぶ場合、「控除が終わってもなお成り立つ収支か」を冷静に確認する必要があります。
選択肢③ そのまま住み続ける
三つ目は、住み慣れた家にそのまま住み続ける選択です。
住み続けるメリット
・住環境の変化によるストレスが少ない
・地域の人間関係を維持できる
・住宅費を抑えやすい
住宅ローンが完済に近づくと、住居費は大きく下がります。
住宅ローン控除は途中で終わっても、「住居費が軽くなる」という効果が老後の安心につながります。
見落としやすい注意点
一方で、
・階段や段差
・通院・買い物の利便性
・将来の修繕費
といった問題が後から重くのしかかることもあります。
「今は問題ない」ではなく、「10年後も住めるか」という視点が欠かせません。
住宅ローン控除は「入口」、老後は「出口」が主役
令和8年度税制改正では、省エネ性能の高い住宅や既存住宅が重視される方向性が明確になりました。
これは、老後の住み替え市場においても重要な意味を持ちます。
性能の低い住宅ほど、
・売りにくい
・貸しにくい
・修繕費がかさむ
というリスクを抱えやすくなります。
住宅ローン控除は入口の制度ですが、老後は「出口の選択」が生活の質を左右します。
おわりに
住宅ローン控除は、老後の売却・賃貸・住み続けるという判断を直接縛る制度ではありません。
しかし、
・控除がいつ終わるか
・その後の住宅の使い道
を意識しておかないと、「税制に引っ張られた判断」になりがちです。
これからの住宅取得・保有では、
「今の減税」よりも
「老後にどう扱える住宅か」
を重視する視点が、ますます重要になっていくでしょう。
参考
税のしるべ
令和8年度税制改正大綱
国土交通省 住宅政策資料
国税庁 不動産所得・譲渡所得関係資料
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。
