住宅ローン控除と将来の売却・相続―「今の減税」が「将来の不利」にならないために―

FP
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はじめに

住宅ローン控除は、住宅取得時の税負担を軽減する強力な制度です。一方で、住宅は「住んで終わり」の資産ではありません。将来、売却する可能性もあれば、相続の対象になることもあります。
住宅ローン控除を使ったことが、将来の売却や相続で不利に働くのではないか、と不安に感じる人も少なくありません。本稿では、住宅ローン控除と将来の売却・相続の関係を整理し、誤解しやすいポイントを解説します。

住宅ローン控除を使っても「売却は自由」

まず結論から言えば、住宅ローン控除を利用したからといって、将来の売却が制限されることはありません
一定期間住んだ後に売却しても、控除を返還する必要は原則ありません。

ただし、注意すべき点が一つあります。
住宅ローン控除は「自己の居住用住宅」であることが前提です。そのため、転勤などで住まなくなり、賃貸に出した場合には、その時点で控除は終了します。
すでに受けた控除が取り消されるわけではありませんが、居住をやめた年以降は適用されない点は理解しておく必要があります。

売却時に影響するのは「譲渡所得税」

住宅ローン控除と直接関係するのではなく、売却時に問題になるのは譲渡所得税です。
譲渡所得は、
「売却価格 −(取得費+譲渡費用)」
で計算されます。

ここで重要なのは、住宅ローン控除を受けたこと自体は、取得費を減らすわけではないという点です。
控除は所得税・住民税の軽減であり、建物や土地の取得価額を直接変える制度ではありません。

ただし、建物については年数の経過とともに価値が下がるため、結果として売却時に譲渡益が出やすくなるケースはあります。これは住宅ローン控除の影響ではなく、建物の減価という別の要因です。

3,000万円特別控除との関係

自宅を売却した場合、多くの人が利用を検討するのが3,000万円特別控除です。
この特例は、一定の要件を満たせば、譲渡所得から3,000万円を控除できる強力な制度です。

住宅ローン控除を過去に利用していても、この特別控除の適用を受けること自体は可能です。
ただし、同一年に「住宅ローン控除」と「3,000万円特別控除」を同時に使うことはできません。

つまり、
・住宅を売却した年は、住宅ローン控除を使えない
・代わりに3,000万円控除を使う
という整理になります。

将来、売却の可能性が高い場合は、「控除期間をフルに使う前に売却する可能性があるか」を一度整理しておくと安心です。

相続時に住宅ローン控除はどうなるか

次に、相続との関係です。
住宅ローン控除は、相続が発生した時点で終了します。
被相続人が控除期間の途中で亡くなった場合、残りの期間分を相続人が引き継ぐことはできません。

これは、「住宅ローン控除が本人の居住と納税を前提とした制度」であるためです。
住宅ローンそのものは相続の対象になりますが、控除は相続されない点は重要なポイントです。

相続税評価額との関係

住宅ローン控除を使ったかどうかは、相続税評価額には直接影響しません
相続税の評価は、
・土地:路線価等
・建物:固定資産税評価額
を基に行われます。

一方、住宅ローンが残っている場合、その残債は債務控除として相続財産から差し引くことができます。
つまり、
・住宅ローン控除 → 生前の所得税・住民税対策
・住宅ローン残債 → 相続税の圧縮要因
と整理すると分かりやすいでしょう。

団体信用生命保険との関係

多くの住宅ローンには団体信用生命保険が付いています。
相続発生時に団信が適用されると、住宅ローン残債は保険で完済されます。

この場合、
・債務控除は使えない
・住宅は「無借金の不動産」として相続される
という状態になります。

住宅ローン控除は終了し、相続税評価額は通常どおり算定されます。
「ローンが消える=必ず得」というわけではなく、相続税の観点では評価が上がる点も押さえておく必要があります。

今後の制度改正と「出口」を意識した住宅選び

令和8年度税制改正では、既存住宅や省エネ性能の高い住宅が重視される方向性が明確になりました。
これは、将来の売却市場や相続市場においても、「性能の低い住宅ほど不利になる」可能性を示唆しています。

住宅ローン控除は入口の制度ですが、
・将来売りやすいか
・次世代が引き継ぎやすいか
という出口の視点を持つことが、これからはより重要になります。

おわりに

住宅ローン控除は、将来の売却や相続を直接縛る制度ではありません。
しかし、制度の使い方や住宅の選び方次第で、将来の税負担や資産価値に差が出ることは確かです。

「今の減税」だけで判断せず、
「将来どう手放すか、どう引き継ぐか」
まで含めて考えることが、これからの住宅取得には求められています。


参考

税のしるべ
令和8年度税制改正大綱
国税庁 譲渡所得・相続税関係資料


という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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