会計士から配管工へ。AI時代に変わる「職業観」とキャリア戦略

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人工知能(AI)の進展により、これまで知的労働者が担ってきた仕事が大きく変わりつつあります。米国では会計士やオフィスワーカーから、配管工や空調技術者といった技能職へ転身する動きが目立っています。
この記事では、報道内容をきっかけに、AI時代におけるキャリアの再構築、技能職の再評価、そして日本にとっての示唆を整理していきます。

1 AIは「知的労働」を先に代替している

AI・自動化の影響は、一般に「肉体労働が奪われる」というイメージで語られることが多いですが、現状はむしろ逆の現象が広がっています。
プログラミング、会計処理、資料作成、文章生成など、ホワイトカラーの業務がAIによって効率化され、企業は管理部門を中心に再編を進めています。

米国で管理部門の削減を発表する企業が増加しているのは、単なる景気循環ではなく、AI導入によって企業が求める人材構造が変化しているためです。
オフィスワークの「定型処理」は、すでに生成AIが高い精度でこなす領域に入っています。

一方で、配管、空調、電気工事など、現場で人間の判断や身体操作が求められる作業は依然として代替が進んでいません。
人間の身体と五感を使う職務は、現時点のAI・ロボットでは完全な置き換えが難しく、むしろ価値が上昇するケースが見られます。

2 配管工・電気工などの技能職が「高収入職」に変化

米国では、技能職を手厚く保護する組合制度や待遇改善の流れにより、配管工・空調技術者の給与水準が大きく上昇しています。

ある転職者は、会計士から配管工へ転身し、給与が3倍になったといいます。
背景には次のような事情があります。

  • 5年間の訓練が無償
  • 組合が給与交渉や医療保険を支援
  • 半導体工場などインフラ分野で需要が増加
  • AIでは代替しにくい技能である
  • 若手の参入減少で「職人不足」が慢性的

日本では「技能は低賃金」という印象が根強いですが、米国では逆転現象が起きています。
若年層でも50歳代でも訓練校に入り直す人が増え、大学進学より職業訓練校の伸び率が大きいというデータも示されています。

3 AIは「新しい産業」を生み出す余地が小さい?

テクノロジーは歴史的に、新たな産業を生み出すことで雇用を創出してきました。
自動車産業、家電産業、IT革命など、いずれも大量の雇用を生み出してきました。

しかしAIは異なる性質を持っています。

  • AI産業自体が、AIによって自動化される
  • コーディング、デバッグ、改善の多くをAIが担える
  • 新製品の開発ではなく「既存業務の効率化」に用途が偏る

つまり「AI革命は雇用創出より雇用削減の側面が強い」という見方が現実味を帯びています。

4 「働くとは何か」が問い直されている

AIが多くの知的労働をカバーすることで、人間に残る仕事の姿が問い直されています。

  • 身体性や現場判断を伴う技能
  • クリエイティブではなく「手を動かす技術」
  • 人との関係構築・交渉・安全管理
  • 感情を伴う対人支援

こうした領域が改めて重視され、技能職・ケア職・対人サービスが価値を持つようになっています。

同時にAI企業のトップは、雇用が縮小した社会を支えるためのベーシックインカムの必要性を語り始めています。
「働く喜び」や「働くことの意味」そのものが変わりつつあるのです。

5 日本における示唆

米国の状況は日本にとって他人事ではありません。
日本でも会計・経理・人事などの間接部門は既にAI導入が進み、事務職採用を縮小する企業が増えています。

一方で、以下の領域は慢性的な人手不足です。

  • 電気工事、設備保全
  • 介護・保育
  • 医療サポート
  • 建設・インフラ
  • 自動車整備
  • 物流
  • 地域インフラ関連(上下水道、再エネ設備など)

AI時代のキャリア戦略として、日本でも「知識労働の学び直し」だけではなく、「実務技能」の再獲得が重要になる可能性があります。

6 キャリア戦略としてのリスキリング

AI時代のリスキリングは、単にプログラミングを学ぶだけでは十分ではありません。
必要なのは「AIが苦手な領域へのシフト」または「AIと協働する逆算的スキル設計」です。

具体的には次のような方向性が考えられます。

  1. 身体性・現場性を持つ技術
     例:設備保守、電気工事、配管、介護技術、災害対応
  2. 意思決定と安全を伴う管理能力
     例:現場監督、品質管理、安全管理
  3. 「AIを使う専門家」への転換
     例:税務・財務・経営アドバイザーがAIを組み込み、価値を再設計する
  4. 地域密着の対人サービス
     例:生活支援、住まい支援、相談業務、地域自治

AIで代替が進む世界では、「AIにできないことを選ぶ」ことがキャリア形成の中心になるといえます。

結論

AIが知的労働を代替し、技能職が注目されるという現象は、米国だけの特殊な動きではなく、世界的な労働市場の変化の一部です。
日本においても、AIと共存したキャリア形成、技能の再評価、柔軟な働き方がより重要になります。

AIが新産業を生む力が限定的だとすれば、人間が担う仕事の再設計が避けられません。
これからのキャリア戦略は、「AIに置き換えられにくい領域へどう踏み出すか」を中心に据える必要があります。
働くことの意味、仕事の選び方、自分の価値の作り方を改めて考える時期に入っているといえます。

参考

・日本経済新聞「会計士→配管工、給与3倍 変わる米国の職業観」(2025年12月4日)
・労働経済関連資料
・AI雇用影響に関する各種研究報告


という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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