日本でも、暗号資産(仮想通貨)を投資対象とする上場投資信託(ETF)が、2028年にも解禁される見通しとなりました。
米国では2024年にすでにビットコインETFが上場し、残高は急速に拡大しています。こうした中、日本の対応は「4年遅れ」とも言われています。
なぜ日本では仮想通貨ETFの解禁に時間がかかるのでしょうか。本稿では、投資家保護と税制という2つの観点から、その背景と意味を整理します。
仮想通貨ETFとは何か
仮想通貨ETFとは、ビットコインなどの暗号資産を実質的な運用対象とし、その価格変動に連動する上場投資信託です。
通常、仮想通貨に投資するには交換業者で専用口座を開設する必要がありますが、ETFであれば既存の証券口座で売買できます。
この点が、一般の個人投資家や機関投資家にとって参入障壁を下げる要因となっています。価格変動リスクは同じでも、「金融商品」としての扱いやすさが大きく異なります。
海外ではなぜ先行したのか
米国では2024年1月、ビットコイン現物を運用対象とするETFが承認されました。
背景には、仮想通貨業界がSEC(米証券取引委員会)を相手取って起こした訴訟で勝訴したことがあります。これにより、規制当局の慎重姿勢が事実上修正されました。
その後、仮想通貨政策に積極的な政権のもと、制度整備と市場拡大が急速に進んでいます。結果として、仮想通貨ETFは「新しい代替資産」として資産運用の一角を占める存在となりました。
日本で解禁が遅れる理由① 投資家保護
日本でETF解禁が遅れる最大の理由は、投資家保護への慎重姿勢です。
仮想通貨は価格変動が極めて大きく、過去には不正流出や業者破綻も相次ぎました。金融庁は、こうした歴史を踏まえ、交換業者に対する情報開示義務やセキュリティ対策の強化を段階的に進めています。
2026年には、金融商品取引法の改正案が国会に提出される予定で、仮想通貨を「より金融商品に近い形」で規律する環境整備が進められています。ETF解禁は、その延長線上に位置付けられています。
日本で解禁が遅れる理由② 税制との調整
もう一つ重要なのが税制です。
これまで日本では、仮想通貨取引による所得は総合課税とされ、最高税率は住民税を含めて55%に達していました。この点は、株式や投資信託と比べて著しく不利でした。
2026年度税制改正では、仮想通貨所得を一律20%の申告分離課税とする方針が示されています。
ETFは投資信託の一種であるため、仮にETFだけ先に解禁されれば、現物よりも税制面で有利になり、市場の歪みが生じるおそれがあります。
そのため政府は、
・仮想通貨の分離課税化
・仮想通貨ETFの解禁
を2028年に同時に実施する方向で調整していると考えられます。
「慎重さ」は本当に悪いのか
「日本は遅い」「投資機会を逃している」という指摘は確かにあります。
一方で、仮想通貨を巡るトラブルの多さを考えれば、制度と税制を同時に整える姿勢には一定の合理性もあります。
特にETFは、一般の個人投資家にも広く普及する商品です。
拙速な解禁によって損失や混乱が広がれば、結果的に市場全体の信頼を損なう可能性もあります。
今後、投資家は何を意識すべきか
2028年に向けて重要なのは、「解禁されるかどうか」よりも、「どのような制度で解禁されるか」です。
・運用対象は現物のみか
・レバレッジ型は認められるのか
・情報開示やリスク説明はどうなるのか
これらによって、ETFの性格は大きく変わります。
また、税制が整うことで、現物・ETF・投信という選択肢の比較が初めて現実的になります。
結論
仮想通貨ETFの国内解禁が2年後とされている背景には、単なる「遅れ」ではなく、投資家保護と税制整合性を重視する日本独自の判断があります。
制度が整った上での解禁は、市場の信頼性を高め、長期的にはより健全な資産形成環境につながる可能性があります。
仮想通貨ETFは、その是非以上に、「どう位置付けるか」が問われている段階にあると言えるでしょう。
参考
・日本経済新聞
「仮想通貨ETF、投資家保護+税制の事情も 国内解禁へなお2年」
(2026年1月29日朝刊)
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。
