仮想通貨投信はNISAで買えるようになるのか 制度改正の方向性と生活者への影響を整理する

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金融庁が暗号資産(仮想通貨)を投資信託へ組み入れる方向で制度改正を検討しています。これにより、ビットコインやイーサリアムといった仮想通貨を対象とした投資信託が、日本でも購入できるようになる可能性があります。

一方で、多くの人が気になるのは「NISA(少額投資非課税制度)で買えるようになるのか」という点です。本記事では、現在の制度、今後の議論の方向性、そして投資家が押さえるべきポイントを整理します。

1. 現状:NISAで仮想通貨は購入できない

2024年に新しくなったNISA制度では、株式・投資信託などが非課税の対象ですが、仮想通貨そのものは対象外です。

理由は次のとおりです。

  • 仮想通貨が「金融商品」ではなく「資金決済法」の枠組みで扱われている
  • ボラティリティ(値動き)が非常に大きく、長期の資産形成向きとは言えないとの考えがある
  • 投資家保護の枠組みが十分でない

しかし、今回の金融庁の制度改正により状況が大きく変わりつつあります。


2. 仮想通貨が「金融商品」扱いへ移行する方針

金融庁は、仮想通貨を資金決済法ではなく、金融商品取引法の対象へ移す 方向で検討しています。
これが実現すると、次のことが可能になります。

  • 仮想通貨を投資信託へ組み入れる
  • 投資家保護の枠組み(開示・管理)が強化される
  • 投資商品としての位置づけが明確になる

つまり、「投資商品」として扱うことで、NISAの議論に乗る土台が初めて整います。


3. 税制:雑所得55% → 金融所得課税20%へ移行の方向

NISAとの連動を考えるうえで欠かせないのが 税制 の変更です。

金融庁は、仮想通貨の売却益を 雑所得(最大55%)から金融所得課税(約20%) へ移すよう求めています。

理由は次のとおりです。

  • 他の金融商品と同じ土台で比較できるようにする
  • 取引が増え、課税が適正化される
  • 投資家にとって分かりやすいルールになる

税制が「金融所得」へ移れば、NISAとの制度上の整合性が高まり、非課税投資の対象とする論点が出てくる 可能性があります。


4. 結論:現時点ではNISA対象外。ただし将来的に議論の余地あり

現状では次のとおりです。

  • 仮想通貨投信そのものがまだ存在していない
  • NISAで仮想通貨を買うことはできない

ただし、制度改正が進むと次のシナリオが考えられます。

【シナリオA】

仮想通貨を組み入れた「投資信託」はNISA対象へ
→ ETF や公募投信として金融商品扱い
→ 長期投資に適した商品設計なら対象に加わる可能性

【シナリオB】

個別の仮想通貨(現物)はNISA対象外のまま
→ 価格変動が極端で、長期安定運用に向かない可能性
→ ウォレット管理の安全性の問題も残る

そのため現実的には、
「仮想通貨そのもの」ではなく
「仮想通貨に投資する投信・ETF」
が先にNISAの議論の俎上に乗るとみられます。


5. 投資家にとってのメリット・注意点

メリット

  • 証券会社の口座だけで仮想通貨の値動きに投資できる
  • ウォレット管理や紛失リスクから解放される
  • (将来的に)NISA対象になれば非課税メリットが大きい
  • 積立投資もしやすい

注意点

  • 仮想通貨は株式よりも圧倒的にボラティリティが大きい
  • 投信にしてもリスクは本質的に変わらない
  • 一部の資産として保有するスタンスが重要
  • 技術・規制・法改正の方向性が変わり得る

投資対象の性質を理解し、過度に集中投資しないことが大切です。


結論

仮想通貨投信は、制度改正・税制改正が同時に進むことで、「一般の金融商品」として扱いやすくなり、将来的にNISAの対象となる可能性があります。ただし現時点では、NISAでは購入できず、最初に対象となり得るのは「仮想通貨を組み入れた投資信託」という形になりそうです。

価格変動の大きさや安全管理の問題など、従来からの課題は引き続き残ります。制度の動向を注視しながら、自身の資産形成にどのように組み込むかを慎重に判断することが重要です。


出典

  • 日本経済新聞「仮想通貨投信、日本でも」(2025年11月19日)
  • 金融庁「資金決済法・金融商品取引法 見直し関連資料」
  • NISA制度関連資料(金融庁)

という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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