暗号資産、いわゆる仮想通貨の税制が大きく変わろうとしています。
政府・与党は、仮想通貨取引で得た利益に対する課税方式を見直し、株式や投資信託と同じ一律20%の分離課税とする方針を示しました。適用は2028年1月からとされています。
これまで仮想通貨の税金は高すぎる、分かりにくいという声が多く、投資のハードルになってきました。今回の見直しは、個人投資家や制度全体にどのような影響をもたらすのでしょうか。
現行制度:仮想通貨は雑所得・総合課税
現在、日本の仮想通貨取引で得た利益は「雑所得」として扱われています。
給与所得や事業所得などと合算され、所得金額に応じて税率が決まる総合課税の対象です。
その結果、所得が高い人ほど税率が上がり、所得税と住民税を合わせると最高で55%に達します。
株式投資の税率が約20%であることと比べると、極めて重い負担といえます。
この税制が、利益が出ても売却をためらう要因となり、国内の仮想通貨市場が活性化しにくい状況を生んできました。
見直し案の内容:株式並みの20%分離課税
今回示された見直し案では、仮想通貨の売却益などを他の所得と切り離し、分離課税の対象とします。
税率は、所得税15%と住民税5%を合わせた一律20%です。
対象となるのは、現物取引だけではありません。
仮想通貨のデリバティブ取引や、関連する上場投資信託(ETF)の所得も含める方向とされています。
これは、税率だけでなく課税の考え方そのものを、他の金融商品と揃えるという大きな転換です。
なぜ今、税制を変えるのか
背景にあるのは、国際的な税制とのギャップです。
海外では、仮想通貨を金融資産として扱い、比較的低い税率を適用している国も少なくありません。
日本の高い税率は、国内投資家の活動を抑制するだけでなく、海外への資金流出を招く要因にもなってきました。
政府・与党としては、税負担を見直すことで国内市場を活性化し、成長分野としての暗号資産ビジネスを育てたい考えといえます。
投資家にとってのメリット
個人投資家にとって最大のメリットは、税負担の予測がしやすくなる点です。
現在は、他の所得との兼ね合いで税率が大きく変わるため、年末にならないと税額が読みにくい状況でした。
分離課税になれば、利益の20%が税金と明確になります。
株式投資と同じ感覚で損益管理ができるようになり、投資判断もしやすくなるでしょう。
注意点:すぐに変わるわけではない
もっとも、この制度はすぐに始まるわけではありません。
適用は2028年1月からとされており、それまでの間は現行の総合課税が続きます。
また、制度設計の詳細は今後の議論次第で変わる可能性もあります。
損失の取り扱いや、他の金融商品との損益通算がどうなるのかなど、実務上の論点は残っています。
税理士・FPとして見ておきたい視点
この改正は、単なる減税ではなく、仮想通貨を金融商品としてどう位置付けるかという問題でもあります。
将来的には、投資商品全体の税制のあり方や、資産形成政策との関係も問われていくでしょう。
個人としては、制度が変わる前提で無理に投資判断をするのではなく、現行制度を正しく理解した上で行動することが重要です。
結論
仮想通貨の税制は、2028年に向けて大きな転換点を迎えようとしています。
株式並みの20%分離課税は、投資環境を分かりやすくし、市場の活性化につながる可能性があります。
一方で、適用までには時間があり、細かな制度設計も未確定です。
今後の税制改正の動きを継続的に確認しながら、自身の資産形成や投資戦略を考えていく必要があるでしょう。
参考
・日本経済新聞「仮想通貨、所得に20%課税 28年から下げ、株式並み」2025年12月23日朝刊
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。

