令和8年度税制改正で変わる住宅ローン減税とこどもNISA

税理士
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令和8年度税制改正大綱では、個人の資産形成や住宅取得に関わる制度に大きな見直しが加えられました。

住宅ローン減税は延長・拡充される一方で、対象の絞り込みも進みます。また、新たに「こどもNISA」が創設され、教育資金一括贈与の非課税措置は終了します。

住宅・教育・資産形成という人生設計の中核に関わるテーマであり、単なる制度改正ではなく、家計の戦略そのものを問い直す内容といえます。

本稿では、その全体像を整理します。


住宅ローン減税は5年間延長、ただし方向性は明確化

住宅ローン減税は、令和12年入居分まで5年間延長されます。

ただし、単純な延長ではなく、制度の「質的転換」が進んでいます。

1. 既存住宅の優遇拡充

省エネ性能の高い既存住宅については、借入限度額が引き上げられます。

さらに、子育て世帯・若者夫婦世帯には借入限度額の上乗せ措置が拡充されます。

既存住宅の控除期間も、一定の省エネ基準を満たす場合には10年から13年へ延長されます。

これは、既存住宅市場の活性化と脱炭素政策を同時に進める意図が明確です。

2. 新築住宅は選別強化へ

一方で、新築住宅については厳格化が進みます。

省エネ基準に適合しない住宅は借入限度額が引き下げられ、将来的には制度の対象外となります。

さらに、災害レッドゾーン(特別警戒区域等)における新築住宅は、原則として制度の対象外とされます。

税制が「安全性」や「立地の合理性」まで踏み込む設計に変わりつつある点は注目に値します。

3. 床面積要件の緩和

既存住宅にも40㎡以上の床面積要件緩和が適用されます。

ただし、合計所得金額1,000万円超の者や上乗せ措置利用者は従来どおり50㎡以上です。

都市部のコンパクト住宅や単身世帯を一定程度意識した設計といえます。


こどもNISAの創設 ― 年齢制限撤廃の意味

現行のNISAは18歳以上が対象ですが、令和9年からつみたて投資枠の年齢要件が撤廃され、「こどもNISA」が創設されます。

制度の概要

  • 年間投資枠:60万円
  • 非課税保有限度額:600万円
  • 18歳到達時に通常NISAへ自動移行

従来のジュニアNISAと異なり、12歳以降は子の同意があれば払出しが可能となります。

制度設計の背景

かつてのジュニアNISAは18歳まで原則払出し不可であり、柔軟性に欠ける点が課題でした。

今回は「長期投資を促すが、完全拘束はしない」という中間設計になっています。

教育資金・成人後のライフイベント資金の準備を、税制面から後押しする制度と位置づけられます。


教育資金一括贈与の非課税措置は終了

教育資金の一括贈与に係る贈与税非課税措置は、令和8年3月末で終了し、延長されません。

理由としては、

  • 利用者が富裕層に偏っていること
  • 教育費無償化の進展
  • NISA制度の拡充

などが挙げられています。

「贈与による資産移転」から「投資による資産形成」へと政策軸が移っていることが読み取れます。


制度全体から見える政策の方向性

今回の改正は、単なる個別制度の延長ではありません。

共通するキーワードは以下の3点です。

  1. 省エネ・安全性重視
  2. 既存ストック活用
  3. 投資による自助的資産形成

住宅も教育資金も、税制は「行動誘導型」へと進化しています。

何を選択するかによって、税制メリットは大きく変わります。


結論

住宅ローン減税は延長されましたが、今後は「どの住宅を取得するか」がより重要になります。

こどもNISAは新たな資産形成の選択肢となりますが、教育費準備をすべて投資に委ねるべきかどうかは慎重な設計が必要です。

教育資金一括贈与の終了は、世代間移転よりも市場型資産形成を重視する政策転換の象徴といえます。

家計設計においては、住宅取得・教育資金・長期投資を別々に考えるのではなく、統合的に設計する視点が不可欠です。


参考

・税のしるべ 2026年2月9日号
「令和8年度税制改正大綱を読む」第6回(個人所得課税③)

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