これまでの記事では、家計の金融資産が過去最高を更新する一方で、高齢者世代を中心に「資産ゼロ」と「資産3000万円以上」の二極化が進んでいる現状を見てきました。この流れは個人の老後生活だけでなく、社会全体にも大きな影響を及ぼします。
では、私たちはこの二極化の時代にどう備えればよいのでしょうか。今回は、世代ごとに考えられる資産形成のヒントを整理してみます。
1. 若い世代(20~30代)に必要なこと
① 早く始める「小さな投資」
資産形成で最も大切なのは「時間」です。複利の効果は長く続けるほど大きくなります。月1万円の積立でも20年・30年と続ければ、元本を大きく上回る成果が期待できます。
若いうちから少額であっても、NISAやiDeCoを活用して投資信託に積み立てることが、後々大きな差につながります。
② 金融リテラシーを身につける
お金の知識は学校教育では十分に学べません。
- 投資信託と株式の違い
- 保険はどこまで必要か
- 借金やローンのリスク
これらの基本を知ることで、無駄な支出や危険な金融商品を避けることができます。情報収集はSNSではなく、公的機関や信頼できるサイトを利用することが肝心です。
2. 働き盛り世代(40~50代)が意識したいこと
① 生活防衛資金を確保
まずは生活費の6か月~1年分程度を現金で確保しておくこと。病気やリストラなど予期せぬ事態が起きても、焦って資産を取り崩さずに済みます。
② 住宅ローンや教育費の計画管理
40~50代は住宅ローンや子どもの教育費が重なる時期です。
- 繰り上げ返済と資産運用のバランス
- 奨学金や教育ローンの活用
- 「なんとなくの支出」を減らす
これらを見直すことで、老後に残る資産に大きな差がつきます。
③ 投資の軸を固める
NISAやiDeCoをフル活用し、分散投資で資産を育てることが重要です。
株式・投信・債券などにバランスよく投資し、「長期・積立・分散」を徹底することで、景気の波に左右されにくい資産形成が可能になります。
3. 定年前後(60代以降)の備え
① 資産の取り崩し計画
退職金や年金をどう使うかは、老後生活の安定に直結します。
- まずは生活費を年金でまかなえるか確認
- 資産の取り崩しは「4%ルール」など目安を活用
- 医療・介護など将来の支出も想定して計画を立てる
「何となく」取り崩すのではなく、計画的に資産を使うことで安心感が得られます。
② 健康を資産と考える
お金だけでなく、「健康」も大切な資産です。
- 定期的な健康診断
- 食生活や運動習慣
- 社会的なつながりの維持
医療費・介護費を抑えることは、資産を守ることと同義です。
③ 就労の継続
可能であれば、定年後も働き続けることは大きな安心材料になります。収入があることで資産の取り崩しを抑えられ、心身の健康にもつながります。
4. 共通して意識すべきこと
① 預金だけに頼らない
日銀の統計では、現金・預金残高が18年半ぶりに減少しました。預金は安全ですが、インフレに弱いという欠点があります。少額でも投資に回すことが、長期的な資産防衛になります。
② 制度をフル活用する
- 新NISA(非課税で投資できる)
- iDeCo(老後資金を積み立てながら節税できる)
- 企業型DC(勤務先で導入されていれば見直す)
これらを使わないのは大きな損です。「知っているかどうか」で資産形成の成果が変わります。
③ 家族で情報共有する
資産管理は一人で抱え込むよりも、家族と共有しておくことが重要です。もしものときに家族が困らないよう、口座や保険の情報を整理しておきましょう。
まとめ
資産二極化の時代に備えるためには、
- 若いうちから小さく始める投資
- 働き盛り世代での計画的な支出管理
- 定年前後の資産取り崩し戦略
- 世代を超えて「預金だけに頼らない」姿勢
といった工夫が求められます。
老後の格差は、単なる「運」ではなく、どのように行動するかによって差が広がります。資産ゼロ世帯が増える現実を踏まえれば、一人ひとりが早めに備えることが社会全体の安定にもつながります。
👉 次回(最終回)は「資産二極化社会で私たちができること」と題して、個人・家庭・社会の3つの視点から、行動のヒントを整理して締めくくります。
📌参考:2025年9月19日付 日本経済新聞朝刊
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。
