事業承継と引退後の資金設計――税務は人生設計と直結する

FP
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事業承継を考える際、会社をどう引き継ぐかに意識が集中しがちですが、もう一つ重要な視点があります。それは、経営者自身の引退後の生活をどう設計するかという問題です。
事業承継と税務は、会社の将来だけでなく、経営者個人の人生設計と切り離して考えることはできません。

事業承継は「引退後の生活」を決める意思決定でもある

事業承継の方法によって、経営者の引退後の姿は大きく変わります。
親族承継や社内承継では、経営者が一定期間関与を続けるケースが多く、収入源も役員報酬や配当が中心になります。一方、M&Aによる第三者承継では、株式譲渡益という形でまとまった資金を得て、経営から完全に退く選択肢も生まれます。
どの承継方法を選ぶかは、単なる会社の問題ではなく、引退後の生活スタイルをどう描くかという選択でもあります。

退職金の位置づけと税務

中小企業の事業承継では、役員退職金が重要な役割を果たすことがあります。
退職金は税務上、他の所得と比べて優遇された扱いを受けるため、引退時の資金確保手段として検討されることが多いものです。ただし、会社の財務状況や過去の支給実績との整合性が求められ、税務上の合理性を欠くと問題になる場合もあります。
退職金は、事業承継全体の中でどのような位置づけにするのかを慎重に考える必要があります。

譲渡益と生活資金の関係

M&Aによる事業承継では、株式や事業の譲渡益が経営者個人に帰属します。
譲渡益には税金がかかりますが、税引後に手元に残る資金をどのように管理・活用するかが重要です。生活費、医療・介護への備え、家族への資産移転など、引退後の資金計画を具体的に描いておかなければ、安心して次のステージに進むことはできません。

相続対策との整合性

引退後の資金設計は、将来の相続とも密接に関係します。
事業承継によって資産構成が変わると、相続税の負担や分割方法にも影響が及びます。承継時点での税務だけでなく、その先の相続まで含めた視点を持つことで、家族間のトラブルを防ぐことにもつながります。

結論

事業承継と税務は、会社の引き継ぎを円滑にするためだけのものではありません。
引退後の生活をどのように送りたいのか、そのためにどのような資金が必要なのかを考えることが、承継方法の選択に直結します。事業承継を「経営の終わり」と捉えるのではなく、「人生の次の段階への移行」として考えることが重要です。

参考

・日本経済新聞「M&Aは特別な手段ではない」PwCコンサルティング パートナー 久木田光明(2025年12月16日)


という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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