ここ数年、住宅購入の現場で「中古戸建て」に注目が集まっています。
背景には、新築マンションや新築戸建ての価格が高止まりしている一方、中古戸建ては比較的手の届きやすい水準にとどまっていることがあります。特に2025年4~6月の首都圏における中古戸建ての成約件数は 前年同期比52%増(5504件) と大幅に伸び、6四半期連続の増加となりました。
さらに、リクルートの調査(2024年12月)でも「購入検討している住宅種別」として中古戸建てを選んだ人が 30%。新築マンションや新築戸建てを上回る結果でした。
中古戸建ての魅力と不安
中古戸建ての大きな魅力は「価格」。同じエリアで新築を買うより、総額を抑えられることが多く、さらに土地付きの持ち家という安心感があります。
一方で気になるのが 「欠陥や不具合」 です。購入後に屋根や外壁、基礎などに問題が見つかり、想定外の修繕費が発生するケースも少なくありません。
この不安を解消する方法の一つが、近年利用が増えている 「住宅診断(ホームインスペクション)」 です。
実際の購入事例
例えば、埼玉県在住のAさん(64歳、自営業)は、静岡県伊東市で築14年の中古戸建て(延べ床約140㎡、購入価格1780万円)を購入しました。
予算は補修費込みで2000万円程度。購入前に専門業者へ住宅診断を依頼しました。
結果はこうでした:
- 外壁や屋根に経年劣化あり
- 断熱材の一部に欠損あり
- ただし、基礎や柱など主要部分には異常なし
見積もられた補修費は 約300万円強。総額はやや2000万円を超えたものの、Aさんは「許容範囲」と判断し、安心して購入を決めたそうです。
住宅診断の流れと費用
住宅診断は基本的に 目視によるチェック が中心です。
- 外壁、屋根など雨漏りを防ぐ部分
- 基礎、柱など構造の主要部分
- 屋根裏や床下(点検口から確認)
調査時間は3~5時間程度。利用者が立ち会えるので、不具合や補修の目安をその場で説明してもらえるのも安心材料です。
料金の目安は、
- 基本セット+水回り確認で数万円
- 屋根裏や床下まで入って調査するオプションをつけると 9万~13万円前後
中古住宅という大きな買い物に比べれば、安心を買うための費用としては十分に価値があるといえるでしょう。
注意点と売り主との関係
診断は契約前に実施するのが望ましく、売り主の同意が必要です。
ただし「不具合が見つかって値引きを要求される」と懸念して拒否する売り主もいます。この場合、専門家は「診断を拒否する物件は購入を見送るのが無難」と助言しています。
購入後の保証も注意が必要です。
- 売り主が不動産会社なら、最低2年間の保証
- 個人の売り主なら、多くは3カ月のみ
つまり、購入前にどこまでリスクを減らせるかが重要です。
まとめ:中古戸建ては「診断」とセットで考える
新築に比べて価格が抑えられる中古戸建ては、これからますます需要が増えていきそうです。
ただし、築年数が経っている物件も多いため、 「安いから」だけで飛びつくのは危険。住宅診断を活用し、修繕費まで含めたトータルの予算で判断することが安心への近道です。
マイホームは人生で最大級の買い物の一つ。住宅診断というプロの目を借りることで、納得の住まい選びにつながるのではないでしょうか。
👉 次回は「住宅診断でよく見つかる不具合と、その補修費の目安」についてまとめてみたいと思います。
📌 参考:
日本経済新聞朝刊(2025年10月4日付)
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。

