〜個人事業主・フリーランス必見の控除活用法〜
会社員から独立して個人事業主になった方や、フリーランスとして活動を始めた方にとって、公的保障が手薄になるのは大きな不安材料です。そんなときに「家族の生活を守るために生命保険をどう活用すべきか」を考える場面が増えてきます。
さらに、生命保険は単に保障の手段としてだけでなく、「税金の軽減効果」がある点でも注目されています。本記事では、生命保険の活用法と、税務上のメリット・デメリットを整理してみます。
生命保険の種類と役割
生命保険は大きく分けて次のような種類があります。
- 死亡保険:一家の大黒柱が亡くなった場合に備える
- 医療保険:病気やケガによる入院・治療に備える
- 介護保険:将来の介護リスクに備える
- 個人年金保険:老後資金を準備する
特に個人事業主やフリーランスにとって重要なのは「死亡保険」。会社員時代に比べ、遺族年金などの公的保障が手薄になるため、不測の事態に備える意味で検討の優先度は高いといえます。
保険料を抑える工夫
生命保険はコストの高い商品が多いため、加入する際は「必要最小限」に絞るのが鉄則です。
- 特約はつけすぎない(シンプルな契約ほど割安)
- 保険金額は「残された家族の生活費+教育費」から逆算する
- 将来収入が減っても支払い続けられる保険料に設定する
また、保険は途中で解約できるものの、解約返戻金が払込額を下回るケースも多いため、「満期まで払えるかどうか」を事前にシミュレーションすることが欠かせません。
生命保険料控除の仕組み
生命保険に加入すると、支払った保険料に応じて所得控除を受けられます。控除を受けることで、所得税と住民税の負担が軽くなります。
控除には3種類あります。
- 一般生命保険料控除
- 個人年金保険料控除
- 介護医療保険料控除
それぞれ年間最大4万円(所得税)の控除が可能で、3種類すべて利用すれば最大12万円まで控除対象になります。
控除額のイメージ
- 年間保険料が2万円以下 → 全額控除
- 年間保険料が8万円超 → 控除額は一律4万円
例えば、所得税率33%の方が年間8万円の生命保険料を払うと、控除額は4万円、節税効果は1万3200円となります。
高所得者に有効な理由
節税効果は「税率×控除額」で決まります。そのため、所得税率が高いほど節税効果は大きくなります。
- 課税所得1,000万円、税率33% → 控除4万円で節税1万3200円
- 課税所得300万円、税率10% → 控除4万円で節税4,000円
つまり、高所得者ほど生命保険料控除のメリットを享受しやすいのです。
iDeCoやNISAとの比較
ただし、税制優遇だけを目的にするなら、生命保険よりもまずiDeCo(個人型確定拠出年金)やNISAを優先すべきです。
- iDeCo:掛金が全額所得控除対象。節税効果は生命保険控除より圧倒的に大きい。
- NISA:運用益が非課税。資産形成に有利。
生命保険は「保障」と「節税」を兼ね備えるものですが、リターンの観点では効率が低い場合も多いため、iDeCo・NISAをフル活用したうえでの追加手段として検討するのが賢い選択です。
実務的な工夫
生命保険を節税目的で使うなら、以下の工夫もポイントになります。
- 保険料は控除上限の年間8万円程度に抑える
- 年払いや月払いを選び、毎年控除を受ける
- 全期前納払いを活用して保険料を割り引きつつ控除を継続的に利用する
また、途中解約しても元本割れしないタイプの商品を選べば、流動性を確保しつつ節税効果も得られます。
まとめ
生命保険は本来「家族の生活を守るための保障」が目的ですが、高所得者にとっては節税効果のある資産形成手段にもなります。
ただし、コストの高さや低利回りには注意が必要。まずはiDeCo・NISAを最大限活用したうえで、「追加的な節税・保障対策」として検討するのが良いでしょう。
特に独立したばかりの個人事業主・フリーランスの方にとって、安心と節税を両立できる選択肢になり得ます。
👉 次回は、実際に「どのような保障額を設定すべきか」「保険料を払い続けられるか」を計算するためのライフプランシミュレーションの具体例をご紹介します。
(参考 2025年9月13日付日経新聞朝刊)
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。

