■キャリアを「守る」から「育てる」へ
これまでの日本型キャリアは、
「安定した会社で働き続ける=人生を守る」構造でした。
しかし、企業の変化が早くなり、AIやDXが仕事の形を変える今、
キャリアは“守るもの”ではなく“育てるもの”に変わりました。
人生100年時代のキャリア戦略の鍵は、
- リスキリング(学び直し)で土台をつくる
- 副業で小さく動き、実践で確かめる
- 出向起業で挑戦を事業に変える
この三つのステップを重ねること。
それが、会社員でもできる「実践型キャリア投資法」です。
■第一の柱:リスキリングで「思考をアップデート」
リスキリングとは、単なるスキル習得ではありません。
変化の時代において、自分の“問い”を持つための学びです。
経済産業省の調査では、40~50代の約7割が「学び直しに関心がある」と回答。
一方で、実際に行動している人は2割程度にとどまっています。
学び直しを始める第一歩は、「業務の延長線ではない領域」に触れること。
たとえば――
- AI・データリテラシーを学ぶ(ChatGPTやPython入門)
- 経営や会計を体系的に理解する
- FP・中小企業診断士など資格を通じて実務感覚を得る
リスキリングは、いわば「知識のNISA」です。
小さな積み立てが、後のキャリアの自由度を広げてくれます。
■第二の柱:副業で「スモール実践」を積む
学んだことは、使わなければ定着しません。
リスキリングの次に必要なのは、副業という“実践の場”です。
副業はもはや特別な行為ではなく、
企業の約7割が解禁または容認する時代になりました。
副業を始める際のポイントは3つ。
| 観点 | 内容 | 目的 |
|---|---|---|
| ① 本業との相乗効果 | 現職の知見を活かせる分野で始める | 学びの実践化 |
| ② 時間設計 | 週5〜10時間程度で試す | 無理のない継続 |
| ③ お金より経験 | まずはスキルと信用を得る | “小さな成果体験”の積み重ね |
副業は、失敗してもダメージが小さい。
「試して、考え、次に生かす」トライアルの場として最適です。
■第三の柱:出向起業で「挑戦を事業に変える」
出向起業は、副業の延長線にあります。
学びと実践を積んだ人が、会社の信頼を背にして本格的に事業化する。
それが「出向起業」という新しい挑戦の形です。
特徴は、退職せずに起業できること。
リスクを抑えながら、経営・財務・マーケティングを現場で学べます。
たとえば、
- 社内で提案した新規事業を、社外で立ち上げる
- 社内技術を活かしたスタートアップをつくる
- VC(ベンチャーキャピタル)や補助金を活用して運営する
出向起業の経験者は、社内でも「新規事業リーダー」や「後進育成役」として評価される傾向にあります。
挑戦と安定を両立させる、この形こそ“次世代のキャリアモデル”です。
■キャリア戦略の三重奏:三つの柱は循環する
リスキリング・副業・出向起業は、順番ではなく循環型のプロセスです。
学び(リスキリング) → 実践(副業) → 事業化(出向起業) → 再び学び直す
この循環をまわし続けることで、
キャリアは「直線的な昇進」から「立体的な成長」に変わります。
■FP・税理士の視点:キャリアにも“キャッシュフロー表”を
お金の人生設計ではキャッシュフロー表を作りますが、
キャリアにも同じ発想が必要です。
次の3つを可視化すると、行動が具体化します。
| 観点 | 内容 | チェックポイント |
|---|---|---|
| ① 学び | 何を、どの期間で、いくら投資するか | 教育費・資格費用のROI |
| ② 副業 | 月いくら稼ぐか・どんな経験を積むか | 所得区分・確定申告の整理 |
| ③ 起業 | いつ・どんな形で事業化するか | 資本金・税務・社会保険設計 |
「お金を管理するように、キャリアも数字で管理する」。
それが、これからの“働き方ポートフォリオ”設計の基本です。
■まとめ:「学び・動き・稼ぐ」を重ねる時代へ
リスキリングは、思考をアップデートする“学びの投資”。
副業は、経験を得る“行動の投資”。
出向起業は、挑戦を形にする“事業の投資”。
この三つを組み合わせることで、
キャリアは「与えられるもの」から「設計するもの」へ変わります。
会社に所属しながらも、自分を起業し、
学びながら働き、働きながら成長する。
それが、人生100年時代のキャリア戦略の三重奏です。
出典:2025年10月6日 日本経済新聞 朝刊
「『出向起業』で事業創出 富士通・NTTドコモなど制度整備進む」
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。
