マンション購入の落とし穴:「長期修繕計画」を知らないまま契約していませんか?

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■ 購入時に見落とされがちな「長期修繕計画」

マンションを購入した多くの人が、実は「長期修繕計画」を確認していません。
国土交通省のマンション総合調査によると、購入時に長期修繕計画を「確認していない」と答えた人は約4割。さらに「知らない」と回答した割合は20代が最も高いという結果が出ています。

長期修繕計画とは、建物の寿命を保つために必要な大規模修繕の内容や時期、費用をまとめたもの。
いわば、マンションの「健康診断書」であり「家計簿」でもあります。
しかし現実には、その計画を理解しないまま購入してしまうケースが少なくありません。


■ 宅建業法の「説明義務の盲点」

宅地建物取引業法第35条では、不動産の売買や賃貸において「重要事項説明」を義務づけています。
購入者は、宅地建物取引士から契約前に説明を受け、その内容に同意して契約書に署名するのが原則です。

ところが――
この重要事項説明の項目には、「長期修繕計画の内容説明」が含まれていないのです。

つまり、法的には「長期修繕計画の存在」や「修繕積立金の算定根拠」まで説明する義務はありません。
結果として、購入者は「積立金の増額リスク」や「老朽化対応の実態」を知らないまま、契約を交わしてしまうことが多いのです。


■ 若年層に強い“キャピタルゲイン志向”

なぜ、20代・30代の購入者ほど「長期修繕計画」に無関心なのでしょうか。
理由の一つは、「将来売れば値上がる」という期待にあります。

特に都市部では、「数年後に資産価値が上がれば住み替えよう」という“仮住まい的”な意識が強く、
修繕費や積立金の上昇といった長期コストに目が向きにくいのが実情です。

しかし、こうした短期志向の裏にはリスクも潜みます。
修繕積立金が不足し、いざ大規模修繕の時期になっても資金が足りない――。
その結果、物件価値の下落や管理不全に陥るケースもあります。


■ 「永住層」も例外ではない

一方、60代以上のマンション居住者の約6割は「永住意向」を示しています。
ところが、築30年以上のマンションでは管理費や修繕積立金の滞納率が3割を超えるという調査結果もあります。

つまり、「一生住むつもり」の人であっても、購入時点で長期修繕計画を十分に確認していないケースが多い。
その結果、将来的に修繕費の不足や管理組合の運営困難に直面するリスクが高まっています。


■ 見直すべきは「宅建業法」の説明範囲

この現状を踏まえると、宅地建物取引業法の見直しが不可欠です。
長期修繕計画の内容を、重要事項説明の義務項目に加えるべきでしょう。

売主や仲介業者は、

  • 現在の修繕積立金の残高
  • これまでの増減推移
  • 今後20〜30年の修繕計画と費用見通し

などを、購入希望者に明示する責任があります。

購入者にとっても、「いくらの物件を買うか」だけでなく、
「何年後に、どんな修繕が発生するか」を把握することが、資産防衛の第一歩です。


■ FP・税理士として伝えたいこと

私は、これを単なる不動産の問題ではなく、ライフプラン全体のリスク管理の問題だと考えます。
住宅ローン返済額に目が行きがちですが、実際には管理費・修繕積立金の増額リスクこそ、長期的なキャッシュフローを左右します。

特に40代以降は、教育費や老後資金とのバランスの中で、住居コストの上昇に耐えられる設計が必要です。
FP相談の現場では、物件価格だけでなく「管理の質」と「修繕計画の実効性」まで見て判断することを、強くお勧めしています。


■ まとめ:マンションは「買って終わり」ではない

長期修繕計画を知らないままマンションを買うというのは、
いわば、点検記録を見ずに中古車を買うようなものです。

見えないコストが将来の資産価値を左右します。
住宅を「資産」として守るためにも、購入時には次の3点を必ず確認しておきましょう。

  • ✅ 長期修繕計画の最新版があるか
  • ✅ 修繕積立金の算定根拠と増額予定
  • ✅ 過去10年の修繕実績・滞納率

法律の整備を待つ前に、私たち一人ひとりが“住まいの経営者”として意識を高めることが大切です。


📝参考:

  • 国土交通省「マンション総合調査」
  • 日本経済新聞(2025年10月14日)「マンション売買、宅建業法見直せ」
  • 宅地建物取引業法 第35条(重要事項説明)

という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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