都市部を中心にマンション価格の上昇が続いています。
築浅物件では購入時より大きく値上がりしている例も珍しくありません。
ライフステージの変化や住み替えをきっかけに売却を検討する方も増えていますが、価格上昇局面だからこそ冷静に整理しておきたいのが「税率」と「特例」の選択です。
本稿では、自宅マンション売却時に押さえておきたい税率の考え方と主な優遇制度、そして判断のポイントを整理します。
譲渡所得の基本構造を確認する
マンションを売却して利益が出た場合、その利益は「譲渡所得」として課税されます。
計算の基本式は次のとおりです。
売却価格 -(取得費+譲渡費用)= 譲渡所得
取得費には購入代金や仲介手数料などが含まれます。
譲渡費用には売却時の仲介手数料などが該当します。
ここで重要なのが「所有期間」です。
所有期間5年以内か、5年超か
税率は、売却した年の1月1日時点での所有期間により区分されます。
- 5年以内(短期譲渡)
税率 約39% - 5年超(長期譲渡)
税率 約20%
5年を境に税率がほぼ倍近く異なります。
売却タイミングが数カ月違うだけで税額が大きく変わることもあります。
価格が高騰している局面では「早く売りたい」という心理が働きますが、税率の差も冷静に比較する必要があります。
3000万円特別控除という大きな制度
自宅(居住用財産)を売却した場合、一定の要件を満たせば、譲渡所得から最大3000万円を控除できる制度があります。
これにより、譲渡益が3000万円以内であれば税負担は生じません。
価格上昇局面では、この特例の活用可能性が広がります。
ただし、以下のような点には注意が必要です。
- 自己居住用であること
- 転居後一定期間内の売却であること
- 親族間売買でないこと
単なる投資用物件には適用されません。
所有期間10年超の場合の軽減税率
さらに、所有期間が10年を超える自宅については、3000万円特別控除後の譲渡所得のうち一定額まで、軽減税率が適用されます。
具体的には、一定の範囲内で税率が約14%台まで下がります。
長期保有のメリットは、価格上昇だけではなく税率面にもあります。
買い替え特例という「繰延べ」の選択
自宅を売却し、より高額な住宅へ買い替える場合、譲渡益に対する課税を将来に繰り延べる特例もあります。
この制度は「税金がなくなる」のではなく、「将来に先送りする」仕組みです。
特徴としては、
- 3000万円特別控除や軽減税率とは原則併用できない
- 将来の売却時に課税が発生する可能性がある
という点があります。
足元の税負担は軽くなりますが、将来の税額が増える場合もあります。
どの特例を選ぶかは、家計全体の中長期設計と一体で考える必要があります。
売却は「税金」だけで決めない
売却時に意識すべき費用は税金だけではありません。
- 仲介手数料
- 住宅ローン残債の精算
- 新居取得に伴う諸費用
- 金利環境の変化
住宅価格が上昇している場合、買い替え先の価格も同様に上昇していることが一般的です。
売却益でローンを完済できたとしても、新居の取得コストや金利上昇の影響で、長期的な負担が増える可能性もあります。
教育費、老後資金、働き方の変化なども含め、家計全体のバランスで判断することが重要です。
売却前に整理しておきたい視点
最後に、売却を検討する際の整理ポイントをまとめます。
- 所有期間は5年を超えているか
- 3000万円特別控除の適用要件を満たすか
- 10年超保有による軽減税率の対象か
- 買い替え特例との比較を行ったか
- 税引後の手取り額で家計に与える影響を試算したか
価格高騰という外部環境に振り回されるのではなく、「税制」と「家計全体設計」の両面から冷静に判断することが、後悔しない住み替えにつながります。
結論
マンション売却は単なる不動産取引ではなく、税制上の重要な意思決定です。
所有期間による税率差、3000万円特別控除、軽減税率、買い替え特例――。
選択肢が多い分、事前整理の有無で結果は大きく変わります。
価格上昇局面では利益に目が向きがちですが、本当に見るべきなのは「税引後の手取り」と「将来の家計全体への影響」です。
売却を急ぐ前に、一度立ち止まり、制度を正確に理解したうえで判断することが大切です。
参考
日本経済新聞
2026年2月14日朝刊
「<メインストーリー>マンション売却、税率を意識」
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。

