日本は高齢化が進み、「認知症を抱えながら暮らす人」が年々増えています。特に東京都はマンションに住む人の割合が全国一高く、「マンションで一人暮らしの高齢者が認知症になる」という状況が現実味を帯びています。
実際に起きたケース
都内のあるマンションで「夜中に上階から床をたたく音が続き、眠れない」という相談がありました。調べると、上階に一人で住む80代の女性が「攻撃されていると思い、我慢できずに床をたたいた」と話しました。のちに認知症と診断されています。
このように、認知症は近隣とのトラブルの原因にもなり得るのです。
東京都の動き
東京都は2023年度から国家資格を持つ「マンション管理士」を管理組合に派遣する事業をスタートしました。
- 認知症の住人への対応助言
- 福祉担当の理事を置く提案
- 医療機関・福祉機関との橋渡し
といった支援を行い、2025年度には派遣件数を倍増(200件)させる予定です。
管理組合・管理会社の限界
- 管理会社は多忙で個別対応が難しい
- 管理組合は役員が毎年交代しノウハウが蓄積されにくい
- 当事者トラブルに介入すると訴訟リスクになる
結果として「誰に相談すればいいか分からない」という状況に陥りやすくなります。
FP・税理士視点からの課題
住まいの課題は「暮らしのトラブル」にとどまりません。お金と法律の問題とも密接に結びついています。
- 成年後見制度の必要性
認知症が進むと、マンション管理費の支払い、相続手続き、売却などの法律行為が困難になります。成年後見制度や任意後見契約が備えとなります。 - 相続と不動産
認知症のまま相続発生すると、売却や名義変更が進まずトラブルに。事前に遺言や家族信託を検討することが有効です。 - 生活資金の管理
認知症による判断力低下は、詐欺被害や不要な出費のリスクに直結。信頼できる人にお金の管理を委ねる仕組みが欠かせません。
共生に向けたヒント
- 理解する:認知症は誰にでも起こり得る身近なこと
- 第三者を巻き込む:専門家・支援機関に早めに相談
- 備える:法律(後見制度・信託・遺言)とお金の仕組みを事前に整える
まとめ
東京都が始めた「マンション管理士」の派遣は一歩前進ですが、制度だけでは十分ではありません。住民同士の理解+法律・お金の備えがそろってこそ、安心できる共生社会につながります。
認知症は誰もが抱える可能性のあるリスク。だからこそ、「お互いさま」の気持ちと、具体的な仕組みづくりが両立することが大切です。
📌 参考 日本経済新聞朝刊(2025年9月26日)
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。

