ヘッジファンドが動くと円が動く?――年末にかけて「もう一段の円安」はあるのか?

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最近、「円安がまた進んでいる」というニュースをよく耳にします。
10月中旬、円相場は1ドル=151円前後と、ここ数年でもかなりの安値圏。
「旅行代が高くなった」「輸入品が値上がりしている」と感じている人も多いのではないでしょうか。

では、この円安はどこまで進むのでしょうか?
そのカギを握るのが、「ヘッジファンド」という存在です。


■ そもそもヘッジファンドって何?

「ヘッジファンド」とは、世界中のマーケットで利益をねらうプロの投資集団のこと。
短期間で売買を繰り返し、AIやデータ分析を使って、上がると思えば買い、下がると思えば売る——そんなスピード勝負の投資をしています。

個人投資家が“スイングトレード”をする感覚を、もっと大規模に、瞬時に、そして億単位の資金で行っているようなものです。


■ 今の円安は「機械的な売り」?

AIを使った為替運用を手がけるリョウビ・アルゴテック・キャピタル(岡山)の鈴木恭輔さんは、こう話しています。

「今の円安は、AIやモデルが自動で円を売っているだけで、経済の実態を見て本格的に円を売っているわけではありません」

つまり、「とりあえず流れに乗って円を売っている」段階。
日本の経済の実力(ファンダメンタルズ)を見ての動きではないというわけです。


■ 円を「売る」「買う」ってどういうこと?

たとえば、海外の投資家がドルを持っていて、「日本円が安くなりそうだ」と考えたら、ドルを買って円を売ります。
そうすると、円の価値が下がって(=円安)、ドルの価値が相対的に上がる(=ドル高)という仕組みです。

為替相場は、こうした世界中の投資家の“売り買いのバランス”で決まります。


■ 今、ヘッジファンドは円をどのくらい売っている?

アメリカの公的データ(CFTC)を見ると、ヘッジファンドの円売りはここ数カ月でかなり増えています。
7月ごろから売りを増やし、9月下旬の時点で5万枚超
今では8万枚ほどまで膨らんでいるという試算もあります。

ちなみに、2024年7月に1ドル=161円まで円安が進んだときには11万枚まで売り越しが増えていました。
この数字が「まだ余地がある」と見られている理由です。


■ 年末に「もう一波」くるかも?

専門家の見立てでは、ヘッジファンドの売り越しが10万枚に達すれば、1ドル=155円程度まで円安が進む可能性があるといいます。
「年末にもう一勝負に出るのではないか」との声も出ています。

つまり、今の円安は一段落ではなく、年末にかけてもう一段進む可能性があるということです。


■ 円安の裏で、日本株にもお金が流れている

もうひとつ注目されているのが、「円を売って日本株を買う」という海外投資家の動き。
その代表が「ウィズダムツリー・ジャパン・ヘッジド・エクイティ・ファンド(DXJ)」というETF(上場投資信託)です。

このETFは、円安になったときに日本株の値上がり分を取り込みやすい仕組み。
最近、このDXJに資金がまた流れ込んでおり、「日本株買い+円売り」のセット投資が再び増えている兆しがあります。


■ なぜ円が安くなりやすいの?

いくつか理由があります。

  1. 日本の金利が低いまま
     → アメリカの金利が高いため、円を売ってドルを買う方が得。
  2. 日本の財政政策が拡張的(お金を出す方向)
     → 景気を支える政策は円安要因になりやすい。
  3. 世界情勢の不透明さ
     → リスク回避でドルが買われやすい。

こうした流れの中で、円は「売られやすい通貨」として見られています。


■ まとめ:年末にかけてどうなる?

  • 現在の円安は「機械的な円売り」が中心
  • まだ“本格的な円売り”の余地が残る
  • ヘッジファンドがもう一度仕掛ける可能性
  • 日本株との連動にも注目
  • 政治・金利動向が円相場の方向を決める

つまり、年末にかけて155円前後の円安トライがあっても不思議ではない、というのが今の市場の見方です。


為替はプロの世界の話に思えますが、私たちの家計や旅行、物価にも直接関わってきます。
円が動く背景を知っておくだけでも、ニュースの見方がぐっと深まります。


出典:2025年10月17日 日本経済新聞朝刊「ポジション ヘッジファンド、一段の円安試す」


という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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