フリーランス法と「曖昧契約」――当事者が気をつけるべきこと

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「この仕事、受けてみませんか?」
メールで日程だけ送られてきて、報酬の金額や支払日が書かれていない――。

フリーランスとして活動している方なら、こんな経験が一度はあるのではないでしょうか。

2023年11月に施行されたフリーランス法は、こうした「曖昧契約」をなくすために生まれました。発注者は業務内容・報酬額・支払日などを、必ず書面やメールで明示しなければならないと定めています。

それでも現場では、いまだに「口約束」や「条件不明」の依頼が多く見られます。なぜでしょうか?そして私たちフリーランスは、どう身を守ればいいのでしょうか。


1. 出版業界や音楽業界の事例

  • 出版社のライター案件
    あるライターは、編集部から「次号の記事、お願いします」と言われただけで原稿を書き始めました。報酬の明細はなく、振り込まれたのは想定よりかなり少ない額。後から抗議しようにも「口約束」では証拠が残りません。
  • 音楽家の演奏依頼
    演奏家の方は、リハーサルと本番の日程だけ伝えられ、出演後に報酬を確認すると「え、こんなに安いの?」という額。事前に条件を知らされていなければ、仕事を受ける判断すら正しくできません。

こうしたケースは、フリーランス法で明確に「違法」とされる行為です。


2. まだまだ残る「口約束文化」

日本商工会議所の調査によれば、フリーランスと取引した企業の約3割以上が、電話や口頭で条件を伝えていたそうです。

つまり「あとで支払うから大丈夫」「だいたいこのくらいで」――そんな曖昧な依頼が、いまも横行しているのです。

これは発注者にとっては楽かもしれませんが、受ける側からすれば「泣き寝入りリスク」が常につきまといます。


3. フリーランスができる自衛策

法律で守られるようになったとはいえ、最前線で身を守るのは自分自身です。
フリーランス協会の平田麻莉代表も、次のように呼びかけています。

「自分専用の契約書フォーマットを持っておくことが大切」

たとえば、報酬や支払日を記入できる簡単な書式をあらかじめ用意しておき、依頼があいまいな場合には「こちらにご記入いただけますか」と伝える。これは相手に確認を迫る「やんわりとした交渉ツール」にもなります。


4. 「お金の話はやぼ」からの脱却

文化・芸術業界には「出演できるだけで名誉」「お金の話をするのは野暮」という雰囲気が根強く残っています。

しかし、その結果として一番損をするのはフリーランス側です。
生活を支えるためには、きちんと契約条件を明示してもらうのが当然。お金の話をすることは決して恥ずかしいことではありません。


まとめ:フリーランス自身が声を上げる時代

フリーランス法は、曖昧な商習慣を正すためにできた新しいルールです。

  • 発注者には「契約条件を必ず明示する」義務がある
  • フリーランスは「条件が不明な仕事は受けない」という姿勢を持つ
  • 自衛のために契約書フォーマットを活用する

これらを徹底することで、不利益を避け、安心して仕事ができる環境を整えていくことができます。

フリーランスとして生きるなら、「曖昧契約からの脱却」は避けて通れないテーマ。法律を追い風に、私たち自身が声を上げ、働きやすい仕組みを育てていくことが求められています。


📌参考:日本経済新聞(2025年8月25日付朝刊)


という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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