ビットコイン相場に異変 ― 崩れた「半減期アノマリー」と機関投資家の台頭

FP
緑 赤 セミナー ブログアイキャッチ - 1

暗号資産(仮想通貨)の代表格であるビットコインが、かつてない静けさとともに高値圏で推移しています。
2024年4月に迎えた4回目の「半減期」から1年半が経過し、例年であれば大きな調整局面に入る時期ですが、今回は違う様相を見せています。背景にあるのは、機関投資家の存在感の急拡大と、市場のプレーヤー交代です。


半減期とは ― ビットコインの供給メカニズム

ビットコインは、発行総量が上限2100万BTCと定められており、約4年ごとに新規発行量が半分になる「半減期」を迎えます。
2024年4月の半減期では、1日あたりの発行量が約900BTCから450BTCに減少しました。これまでの半減期では、供給減少を材料に価格が急上昇し、その後1年ほどで大幅な下落に転じる「アノマリー(経験則)」が繰り返されてきました。

実際、過去3回の半減期では、価格上昇の後に長期調整が必ず訪れています。
しかし今回は、2025年10月時点でも11万ドル前後という高値を維持しており、経験則が通用しなくなったといわれています。


静かな相場 ― 投機市場から資産市場へ

興味深いのは、ボラティリティ(価格変動率)の低下です。
暗号資産分析サイト「コイングラス」によると、現在の変動率は2%以下と、過去最低水準にあります。3回目の半減期(2020年前後)では5%超の変動が当たり前だったことを考えると、相場の安定化は際立ちます。

背景にあるのは、ビットコインを「短期投機」ではなく「長期保有資産」として扱う機関投資家の台頭です。
2024年には米国でビットコイン現物ETF(上場投資信託)が承認され、米大学基金や政府系ファンド、公的年金などが保有を開始しました。
こうした投資家は短期的な相場アノマリーには左右されにくく、市場の流動性を高めることで、従来の「自己実現的な下落パターン」を抑制しています。


データが示す構造変化

口座分布のデータからも、個人主導から機関主導への移行が見られます。
0.01〜1BTCを保有する個人口座は1年間で2%減少した一方、100〜1000BTCを保有する大口アカウントは約20%増加しました。
ビットバンクの分析によれば、現物ETFへの1日あたりの資金流入は約1.4億ドルに達し、同時期の新規発行量(約5000万ドル相当)を大きく上回っています。
もはや半減期による需給変化は、ETF経由の資金流入に吸収される規模になったといえます。


それでも残る「警戒要因」

ただし、完全にリスクが消えたわけではありません。
米連邦準備理事会(FRB)の金融政策が転換すれば、リスク資産から資金が流出する可能性があります。
また、仮想通貨を財務戦略に組み込む企業――米マイクロストラテジー(現ストラテジー)や日本のメタプラネットなど――の株価が低迷すれば、これら企業による追加購入も鈍化しかねません。

このため、市場では「長期投資家による下値の買い支えがある一方で、一時的な調整もあり得る」との見方が共存しています。


結論 ― 経験則に頼らない時代へ

ビットコイン市場は、もはや個人の思惑で動くステージを越えました。
ETFを通じた機関マネーの流入が、相場の新しい「安定装置」となっています。
半減期をめぐるアノマリーは崩れたともいえますが、それは裏を返せば、暗号資産が金融インフラの一部として成熟し始めた兆候でもあります。

今後の焦点は、FRBの政策と機関投資家の資金動向がどこまで相場を支えるか。
2020年代後半は、ビットコインが「投機」から「制度資産」へ移行する転換点となりそうです。


出典

  • 日本経済新聞「ビットコイン、崩れた経験則」(2025年10月31日)
  • CoinGlass「Bitcoin Historical Volatility Data」
  • 米SEC Form 13F 公開情報(2025年上期)
  • ビットバンク・マーケットレポート(2025年10月)

という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

タイトルとURLをコピーしました