2025年問題とビジネスケアラーの現実
団塊世代が全員75歳以上になる「2025年問題」。
介護を必要とする高齢者が一気に増えることで、現役世代の生活に直撃します。親や配偶者の介護を担いながら働く 「ビジネスケアラー」 は、2025年には約307万人、2030年には318万人にまで増える見込みです。
経済産業省の試算では、離職や生産性低下による経済損失は年間9兆円規模。これは社会全体で取り組むべき課題です。
職場で使えるサポート制度
まず知っておきたいのは、職場にすでにある 法的な介護支援制度 です。
- 介護休業制度
要介護状態の家族1人につき、通算93日まで休業可能。分割取得もOK。雇用保険から給付金が支給されます。 - 介護休暇制度
年5日(対象家族が2人以上なら10日)まで、1日単位や半日単位で取得可能。給与は会社規定によりますが、有給扱いの企業も増えています。 - 時短勤務やフレックスタイム
介護を理由に勤務時間を柔軟に調整できる制度を導入する会社もあります。
まずは人事部や上司に「制度として何が使えるか」を確認しましょう。
👉 ポイントは、いざという時に慌てないように“事前に情報を押さえておくこと” です。
相談できる公的窓口
「どこに相談すればいいかわからない」という声も多く聞きます。以下の窓口を活用できます。
- 地域包括支援センター(市区町村ごとに設置)
高齢者やその家族の相談窓口。介護保険の申請方法や地域のサービス紹介など、最初に頼る場所です。 - 介護支援専門員(ケアマネジャー)
要介護認定を受けた後、ケアプランを作成し、必要なサービスを調整してくれる専門家です。 - 職場の相談窓口・産業医
最近は「介護と仕事の両立支援窓口」を設置する企業も増えています。
広がる介護保険外サービス
介護保険には「同居家族がいる場合は生活援助が使えない」といった制限があります。そこで注目されるのが 保険外サービス。
- 掃除・調理・見守りサービス
民間企業「イチロウ」では利用回数が急増し、平均利用額は月4万円。依頼の7割がビジネスケアラーです。 - トラベルヘルパー
旅行先で入浴や移動をサポートしてくれるサービス。家族での外出や思い出づくりに活用する人が増えています。
👉 ポイントは「全部を自分で抱え込まず、アウトソースできる部分は割り切ってお願いする」こと。
費用感と会社の支援
保険外サービスはどうしても費用がかかります。
月4万円前後が目安ですが、これを「家計負担」ではなく「仕事を続けるための投資」と捉える考え方もあります。
さらに、日本総合研究所の専門家も指摘するように、 企業が福利厚生として利用料の一部を補助する仕組み を導入すれば、従業員にとっても大きな助けになります。大企業を中心に、今後こうした流れが広がる可能性があります。
今日からできる準備リスト
「自分はまだ関係ない」と思っていても、介護は突然やってきます。
以下のチェックリストで、今日から備えてみましょう。
- ✅ 職場にある介護休暇・休業制度を確認しておく
- ✅ 地域包括支援センターの場所と連絡先をメモしておく
- ✅ 親や配偶者のかかりつけ病院・服薬情報を共有しておく
- ✅ 保険外サービスの費用感をざっくり把握しておく
- ✅ 兄弟姉妹や家族と「介護が必要になった時の分担」を話し合う
まとめ ― 介護は「チーム戦」
介護を一人で抱え込むのは限界があります。
制度・サービス・企業・地域を「チーム」として巻き込み、仕事と介護を両立していくことが大切です。
2025年問題を前に、「自分がビジネスケアラーになったら?」とシミュレーションしてみることが、安心につながります。
👉 明日からできる一歩は、 「職場と地域の制度を知る」こと。
👉 そして、「必要なときにはサービスを使ってもいい」という気持ちの切り替えです。
👉参考:日本経済新聞(2025年9月20日付 夕刊)
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。
