デジタル化が変える相続実務(第6回)――遺言では書き切れないデジタル資産の扱い

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デジタル遺言の議論が進む一方で、相続実務ではすでに別の問題が顕在化しています。
それが、デジタル資産の存在が把握できないまま相続が始まるケースです。

預貯金や不動産と異なり、デジタル資産は目に見えません。
遺言があっても、「そもそも何が存在するのか分からない」という事態は、今後さらに増えると考えられます。

デジタル資産とは何を指すのか

相続実務で問題になりやすいデジタル資産には、次のようなものがあります。

・ネット銀行・ネット証券の口座
・クラウド上の写真・文書データ
・有料サブスクリプション契約
・ポイント・マイル
・暗号資産

これらは財産的価値の有無にかかわらず、相続人にとって「把握できない」こと自体が大きな負担になります。

デジタル遺言でカバーできること・できないこと

デジタル遺言によって、財産の配分を示すこと自体は可能です。
しかし、IDやパスワードの扱いについては、慎重な対応が必要です。

遺言に直接ログイン情報を記載すると、
・セキュリティ上の問題
・生前に内容が漏れるリスク

が生じます。

一方で、何も残さなければ、
・口座にたどり着けない
・解約できず料金が発生し続ける

といった問題が起こります。

デジタル遺言は万能ではなく、
情報の所在をどう伝えるかという別の設計が不可欠です。

実務で使われ始めている整理方法

実務では、次のような対応が現実的です。

・デジタル資産の一覧表を別途作成する
・IDやパスワードは遺言とは分離して管理する
・更新頻度を前提に「定期的に見直す前提」で設計する

デジタル遺言は「最終意思の表明」、
デジタル資産リストは「実務の入口」と役割を分ける考え方が重要になります。

暗号資産がもたらす新たな難しさ

暗号資産は、デジタル資産の中でも特に注意が必要です。

・秘密鍵を失えば事実上取り戻せない
・取引履歴や評価が複雑
・相続人が存在自体を知らないケースが多い

遺言で承継先を指定していても、
管理情報がなければ実行できないという点で、従来の金融資産とは性質が異なります。

税務・FP視点での注意点

デジタル資産は、把握が遅れるほど、
・相続税申告の漏れ
・評価誤り
・二次相続への影響

といったリスクが高まります。

特に、相続人が高齢の場合や、ITに不慣れな場合、
「気づいた時には期限が迫っている」という事態も珍しくありません。

遺言と同時に、
相続人が実際に動けるかどうかまで含めて設計する必要があります。

結論

デジタル遺言は、相続の意思を示す強力な手段です。
しかし、デジタル資産については、遺言だけでは不十分な場面が多くあります。

重要なのは、
・何が存在するのか
・どこに情報があるのか
・誰が実務を引き継ぐのか

を整理して残すことです。

相続のデジタル化は、
「書類を残す」から「情報構造を残す」時代へと進んでいます。

次回は、シリーズの締めとして、
「デジタル時代の遺言・終活チェックリスト」を整理します。

参考

・日本経済新聞「デジタル遺言要綱案、手書き負担減や押印除外」


という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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