自宅の金庫などに現金を保管する、いわゆる「タンス預金」。2025年7月時点で約47兆円となり、2023年1月の過去最大60兆円から13兆円も減少しました。長く続いた低金利のもとで膨らんできたタンス預金が、いよいよ減少局面に入っています。今回はその背景と今後の展望を整理します。
なぜタンス預金が減っているのか?
① 金利上昇の影響
これまで「銀行に預けても利息がつかない」状況が長く続いたため、現金を自宅に保管していた人が少なくありません。ところが近年は金利が上昇し、定期預金や個人向け国債などに資金を移すメリットが出てきました。
大手銀行関係者も「タンス預金を取り崩して、預金や国債に向かっているのでは」と指摘しています。
② 物価上昇による生活費圧迫
消費者物価指数(CPI)は2024年以降、8カ月連続で3%以上の上昇を記録。日用品の値上げにより、タンス預金を取り崩して生活費にあてるケースも増えているようです。
現金は保有しているだけでは購買力が減少していくため、「現金離れ」が進む一因になっています。
③ 犯罪リスクへの警戒感
近年相次いだ広域強盗事件も影響しています。
「自宅に多くの現金を置くことは危険」という意識が広がり、子ども世代から親に「銀行に預けて」と促すケースもあると専門家は指摘しています。
過去のタンス預金の背景
実はタンス預金が急増したのは2000年代初頭。バブル崩壊後の金融不安が広がり、2003年には30兆円規模に達しました。
その後も日銀の異次元緩和やマイナス金利政策によって「銀行に預けても意味がない」との心理が広がり、タンス預金は膨張していきました。
経済への影響とこれから
タンス預金は使われないお金です。
リコー経済社会研究所の芳賀研究員は「タンス預金が増えると、設備投資や証券投資にお金が回らなくなる」と指摘します。
逆に言えば、眠っていた資金が金融機関や投資に回り始めることは、日本経済にとってプラスに働く可能性があります。
人生100年時代に考える「現金の持ち方」
老後の安心感から「現金を手元に」という気持ちは理解できます。しかし、金利上昇や物価高の局面では、現金の価値は目減りしていきます。
- 一部は生活費の安心資金として現金で
- 残りは預金や国債、分散投資へ
こうしたバランスが「人生100年時代」の資産管理には欠かせません。タンス預金の減少は、日本の家計が少しずつ「動くお金」にシフトし始めた兆しかもしれません。
📌 まとめ
- タンス預金は60兆円から47兆円へ減少
- 金利上昇、物価高、犯罪リスクが主な要因
- 眠っていたお金が動き出せば経済成長の後押しに
- 老後の安心と資産保全の両立が今後の課題
✍️参考:日本経済新聞「タンス預金、13兆円減」2025年9月8日
ということで、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いいたします。

